前編



(※INタルタロスからキムラスカへ)
(※ルークの奮闘記、中編です)
(※ルークさん、仲魔の悪魔を使います)
















シンデレラの優雅なランチタイム』 中編 (お題提供:香水アリス



















 ルークはタルタロス船内の質素なベットの上で眠っていたが、ふいに船体が揺れ、警報や爆音といった音が耳に入り慌てて飛び起きた。
「ーったく! 次から次に…」
 ルークはデビルメイクライでの経験から、この船がそう長く持たないと読み、さっさと脱出することにした。
「…ああ、でも……」
 ここでマルクトに恩を作っておいた方がこっちの有利になるだろうと踏み、にやりと口元をゆるめた。
「そうと決まれば。サキミタマ、クシミタマ、ニギミタマ、アラミタマ! マルクト兵達を守れ!! 俺の命令だってこともつけたしてなv」
 四種類の御霊達を呼び出し、ルークは指示をすると、御霊達は宙で仲良くクルクル回りながら「御意!」っと返事をすると、光になって消えた。
 あの四体は、人修羅が合体で作った特別品で、普通のものよりも格段に強い。命令を必ず成功に導いてくれるだろう。
 ルークは、御霊達にマルクト兵達を任せ、自分も脱出するべく、どこで覚えたのかは不明だが牢破りを難なくこなし、外へ出た。
 通路を走る途中で、おそらく襲撃犯らしきオラクルの兵達に出くわしたり、ライガにまで出くわした。
 どうやら彼らは船内の人間を皆殺しにするよう命令されていたのだろう、ルークの姿を見るなり躊躇なく襲いかかってきた。
 しかし残念ながらすぐさまどこからともなく飛んできた御霊の一体に、その姿のどこにそんな力があるのか分からない強烈な体当たりを食らい、あっさり撃沈された(そうでなくても御霊は強力な悪魔だから仕方がない)。ルークは、グッジョブ!っと助けてくれた御霊に親指を立てると、御霊は「どういたしまして」っと言って、また姿を消した。
 そうしてオラクルの兵や、魔物の攻撃を回避し、やがてルークはタルタロスの甲板で、六神将やオラクル兵や魔物に囲まれたイオンとアニスを発見した。
 ルークは舌打ちをし、不本意だが大声で注意をこちらに向けさせ、その隙に敵の背後からアルビオンを出現させた。
 ゼリーっぽい姿をした巨大な威霊に、敵味方問わず悲鳴があがり、そこにアルビオンが手にしている武器を振って、イオンとアニス以外をゴミ掃除をするようにタルタロスから落として撃退した。
 ついでにルークの背後から切りかかってきた鮮血の馬鹿も、アルビオンの平手打ちで無様にタルタロスの壁に叩きつけられた。
「御苦労さま。導師、無事だったようだな」
「る、ルーク…、これは一体…?」
「話せば長くなるぞ?」
「あ、いえ…いいです。深くは追及しません」
 真っ青になって、フルフル首を振るイオンの姿にルークは、そうか?と言って、今頃になって駆けつけてきたジェイドとティアの方の目を向けた。
 タルタロスの人員達は、ルークの仲魔のおかげで大半が命を救われ、タルタロスの奪還にも成功した。
「(余計な労力使わされたが、手土産ができたからいいか…)」
 ルークは壁にめり込んだままの鮮血の馬鹿…もといアッシュの髪を掴んで引っぺがすと、ズルズルと引きずって行った。もちろんみの虫のようにグルグル巻きにしておくのも忘れない。
 タルタロスは、なんとか無事にバチカルに到着した。
 それまでの道中、自称和平の使者ジェイドや、自覚のない誘拐犯ティアから、今まで何をやっていたんだとか、一人で動くなんて軽率だとか、オラクル兵や魔物を退治した御霊達がルークのことを言っていたことや、ゼリー状の巨大な物体(アルビオン)についてあれこれ言われたが、ルークはひたすら無視した。イオンが必死にルークを庇い、本来守るべき主にも関わらずイオンの言葉を遮ってまでルークに詰め寄ってくるティアやアニスを見て、ルークはローレライ教団はもう駄目だと本気で思った。




***




「(さーてと、こっからどうすっかな〜)」
 バチカルに帰還し、出迎えを受けてバチカルの最上階へ。
 ルークの努力という名の躾をほどこした結果、今ではすっかりルークの下僕と化したキムラスカの王にこれまでのマルクトの使者の悪行やユリアの子孫の悪態ぶりを暴露し、同席してたこちらも同じくルークに躾けられたモースが床に頭をめり込ませそうなほど頭を下げて謝罪をした。
 彼らの愚行だけでも戦争をする理由には十分だが、無駄な血を流さないことに越したことはない。
 マルクトの皇帝がどう出るか。ジェイドの態度などに関することも漏らすことなく書いたうえでの和平の同意書を返信した。
 これ以上キムラスカに優位になられたらさぞ困るだろうから、誠意ある対応が望めるだろうなと、ルークは口元をゆるめた。

「ちょっと、ルーク。ぼーっとしている場合じゃないのよ」

 ……ちっ。
 ルークは、心の中で大きく舌打ちをした。
 預言通りに事を進めたいわけじゃない。だが和平の関係でアグゼリュスへの親善が必要だった。ルークがそれに任命されることになったのだが…。

 ……死刑確定での同伴だってのを自覚してねーな。こいつら。

 アグゼリュスは現在障気が充満していて非常に危険だ。
 親善大使の同伴にティアがいるのは、モースがティアの罪をティアの命をもって償わせるためだ。モースは彼女を切り捨て、その身をキムラスカに譲渡したのである。だがティアは許されたものだと思い込んでいるようだ。
 ジェイドの方は…、まあこっちは賢い分自分の置かれた状況を理解しているのだろう。タルタロスの時よりは幾分大人しい。ジェイドは和平の使者を降ろされ、代わりに来たのがフリングス将軍だった。ジェイドはその部下として従うことになったらしい。だが人を見下すその態度を改める気はないようだ。
 フリングスがジェイドとは比べ物にならない誠実で優秀な人物だったことに、ルークは密かに安堵した。
 …だが安心も束の間のことで。

 イオンと共にダアトに戻ったはずのアニスが走ってきて、イオンが攫われたと報告してきたからだ。

 ちょっとまて!
 突っ込まずにいられない。アニスが慌てた様子で出す言葉に、ルークは頭痛を感じるどころか貧血を起こしそうになった。
 イオンはダアトに帰らず、あろうことか呑気に街を回っていたらしく、同伴していたアニスが目を離したすきにいなくなってしまったらしい。どうも漆黒の翼という盗賊団に連れていかれるのを目撃したという通行人の証言もあったらしいが…、それよりも。
「ついででもいいですから、イオン様を探してくださいよ〜」
「っ…、ついでって…、アニス、おまえ…ここまでバカだったとはなぁ」
「バカってなんですかぁ! あたしたイオン様が心配で…」
「今のは失言だわ。アニスに謝りなさい!」
「黙れ! ついで探せで済まされる程度の奴なんざ、俺は知らねぇよ!」
「あんた、馬鹿? イオン様がいないと和平も台無しなんですよぉ?」
「馬鹿はおまえだアニス。その大事なイオンを見失ったのはおまえなんだぞ。おまえがイオンを守れなかったせいで和平を台無するんだ。おまえが今言った言葉、そういう意味も持つんじゃねーか? 軽口もほどほどしろ」
 言われてアニスはさーっと青ざめた。
「ルーク、アニスはまだ子供なのよ! そんなことより…」
「子供だからって許されるだ? 戦場じゃ子供でも戦わなきゃいけないって言った奴が言うのか? 矛盾してるってことに気づけ、ガキ」
「なっ…!」
「ルーク…そりゃいくらなんでも…」
「ガイ、関係ないおまえは黙ってろ」
 一応荷物持ちということでついてくることになったガイが、許しもないのに割って入ってきたのでルークは一睨みして黙らせた。ガイが殺意をかすかに目の奥に光らせたのも見逃さなかった。
 あまりにもティアがぎゃいぎゃい五月蠅いから、最後には猿ぐつわをされて、しまいには手枷をつけられた。
 ティアの襲撃事件の罪の軽減のためにヴァンが囮になり海路を、ルーク達は陸路を通ってアグゼリュスへ向かうことになった。

「フリングス将軍。少しよろしいですか?」
「はい。なんでしょうか?」
「あなたは信頼できる方だ。だから俺の強い味方を紹介しておきます」

 アグゼリュスの道中に、ルークはフリングスに自分が使役している悪魔を紹介しておいた。
 彼からの理解を得た後、ルークはキムラスカから届いた報告を聞いて、眼をむいて倒れそうになった。

 牢に入れていたアッシュが、脱走したということだ。

「(デコの執念つーか…、逆恨みのなせる業というか…。アグゼリュスのことが穏便にすめばいいがな…)」

 だが運命は彼にストレスを与え続ける。


「ルーク! 私も同行いたしますわ!」


 デビルメイクライに帰りてーよー(涙)


 もっと他に止める方法あっただろうが、インゴベルトのクソじじいーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!


 王の言葉を無視して勝手についてきていたナタリアの姿を見てあげたルークの声にならない絶叫も、正義感だけはお強い王女様には届かなかったらしく、「王女とは思わないでくださいませ」っとまで言って同行を願い出てしまったのだった。


「ダンテー! 人修羅ー、もういやだ、助けてーーーーー!!!!」
「みゅぅぅぅぅ! ご主人さましっかりしてですの! ダンテさんって人がきっと助けにきてくれるですのー!」
 頭をかきむしって喚くルークを、ルークの頭から振り落とされないように必死にしがみついているミュウが慰めた。

 てゆーか、ダンテとか人修羅って誰?

 誰もが同じことを思ったという。




 そしてその人物達と、彼らはついに出会うことになる。
 ……毒に侵された真の大地にある、監視者の街で。
 魔の血を引く狩人と、人の姿をした悪魔の怒りとともに。












あとがき

 遅くなりましたすみません。
 次回で、やっとダンテ達が助けに来てくれます。

 ルークの苦労は次回で終わります。

 えーと…、いただいたリクエストはとてもシリアスな展開が予想されるものだったんですが、ギャグちっくに終わりそうなので…、御不満でした遠慮なく言ってください。

 →後編
 やっとダンテ達が出ますけど…、全くシリアスじゃないです。





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