60000ヒット記念企画で、昴様のリクエスト『生まれてすぐDMCの世界(ノクマニED後でノクマニ主がダンテの元で悪魔狩りをしている)へ飛ばされ、ダンテとノクマニ主に育てられたルークがローレライに呼ばれアビス世界へ。崩壊後、ユリアシティで同行者に文句を言われている(ルークは常識人なので文句の矛盾に気が付いている)所へ、ダンテとノクマニ主が迎えに来る、と言う話』







(※DMC世界で育ったルークは、二人と一緒に仕事に行くこともあるということで)
(※キムラスカとモースは、半人半魔と人のような魔人に育てられた強者ルークによって躾済み。ナタリアは変化なし)
(※これ以降、ダンテと人修羅の出番がしばらくありません)
(※別題名、ルークの奮闘記前編。IN屋敷〜チーグルの森で、ライガと和解まで)
(※ルークが、悪魔を使役しています)
(※若干、流血表現あり)



※6月4日、微書き換え

























シンデレラの優雅なランチタイム』 前編 (お題提供:香水アリス


































 今宵は満月。
 薄汚く、ゴミが散乱し、人が住まなくなってもう幾年というゴーストタウンに、悲痛な悲鳴があがった。
 レンガ造りの壁が砕かれ、そこから路上へと転がったそれは、人なのではない。
 異形の者。闇を住処に人の魂を堕落させ喰らう者。一言で悪魔と呼ばれているものだ。
 悪魔はダラダラと赤黒い血を口から吐き出しながら、固い靴音を鳴らしながら近づいてくる赤をまとった狩人の存在に気がつくと、再び悲鳴をあげて無様に逃げ出そうとした。
 赤いコートをまとった銀髪の狩人は、にやりと笑うと手にした大型の銃で悪魔の体に鉛玉を打ち込み、悪魔は魔力のこもった弾丸の一撃を受けると短く悲鳴をあげて、あっさりと絶命した。

「ダンテっ」

 ダンテと呼ばれた狩人の背後から、やや怒りのこもった声が聞こえ、振り返ると、腰に手を当てて仁王立ちしている17歳前後の黒髪の少年がいて、ダンテを軽く睨んでいた。
「おいおい、なに機嫌悪くしてんだ少年?」
「勝手に飛び出すなって何度言ったら分かるの?」
 こっちはあんたが、飛び出したせいで残りの残党を相手にしなきゃならなくなって大変だったんだから!
 じと〜っと睨んでくる少年に、そいつは悪かったなと、ダンテは降参をするように両手をあげ、けれど悪びれもなく笑った。
「あー! ダンテ一人でそいつやったのか!!」
 少年の背後にいた、少年と同じ年頃ぐらいの金色をおびた鮮やかな朱い髪の少年が、転がっている悪魔の死体を見て声をあげた。
「俺が倒すって言ったのに、ひでぇ!!」
「おまえがモタモタしてっからだろうが、ルーク」
「いつもそうだ! ダンテー!!」
「お? やる気か?」
「二人とも喧嘩はやめ! とりあえず仕事終わったんだから帰ろう」
 黒髪の少年は二人を止め、三人は家路につくことにした。

 よもや今宵、朱い髪の少年ルークが、二人のもとから連れさらわれることになるとは、誰も想像はしなかった…。




「…んっ?」
 三人が営む(本来はダンテが立ち上げた店)、デビルメイクライに帰ってきて、最初に異変に気づいたのは黒髪の少年だった。
 ダンテの仕事机に何か紙がおいてあり、その脇にサンタクロースが抱えていそうな巨大な袋が口を縛られた状態で置かれていた。
「なんだありゃ? っ、少年?」
 ダンテが訝しげに呟くよりも早く、黒髪の少年が足早に仕事机に近づくと、紙を取ってその文面に目を走らせた。
「……! ルーク!」
 黒髪の少年が振り返って、ルークの姿を探したが、ルークはどこにもいなかった。
「あぁ? どこ行きやがったんだ?」
「…っ!」
「…少年?」
「ふざけ…やがてぇ!!!!!!」
 黒髪の少年が地獄の底から這い上がるような声をあげると、うちに秘める魔力が溢れ出して、店全体が揺れ始めた。
「おい、何があった!」
 ダンテが聞くと、少年は顔に刻印を浮かび上がらせて目を金色に輝かせて、表情は怒りに満ち溢れた顔で睨むようにダンテを見ると、握りしめていた紙をダンテに手渡した。
 何怒ってやがんだか…。
 ダンテは、彼をここまで怒らせた原因の紙を広げて文面を見た。




 『今まで我が愛し子を預かってくれたことを感謝する
 頃合いとみたので、返してもらった
 報酬は机の上においておくので、確認してくれたまえ
 選りすぐりの品々だから、換金すれば良い値になるだろう。赤がトレードマークの店の主人のせいで随分と金銭面で苦労しているのだろうから感謝してくれたまえ
 では、今までご苦労だった。ハイテンションな何でも屋の諸君』

 最初がロで始まる意思集合体より




「…………ざけてんな」
 ダンテは、ぐしゃりと紙を握りつぶした。
「ダンテ! 俺ルークを取り返してくるから、あとよろしく!!」
「待ちな少年」
「なに!?」
「俺も付き合うぜ」
「…そういうと思ったよ」
「さすが相棒身も心も一心同体って、っ!」
「さっさと行くよ」
 ダンテを軽く殴った黒髪の少年の背に、ダンテが「ルーク来てから、おまえよく笑うようになったしな…」っと、言っていたが少年は聞こえないふりをした。




***




 ルークは、非常に荒れていた。

 気がつくと見知らぬ屋敷の庭にいて、混乱している間に兵隊がきて捕まって。
 そして色々調べられた結果、何故かこのファブレ侯爵家の一人息子ということで屋敷に無理やり住まわされてしまった。

 自分は確かに身元が不明で、七年前にダンテの店の前で行き倒れていたところを拾われて育てられたのだ。
 突然身元が判明したって不思議ではない立場ではあったが、ルークは腑に落ちなかった。
 まず第一に、明らかに時代の毛色が違う世界に来てしまったこと(この原因についてはまだ不明)。
 貴族なのだから庶民との落差があるのは分かるが、陰で何やら侯爵(父親らしいが…)やキムラスカ王とか、モースとかいう白豚がひろひそやり取りをしているのに気づいた。
 それもこれも、デビルメイクライという何でも屋で、半人半魔のトラブルメーカーの店の創立者と、見た目は限りなく人間の、でもはっきりいってたぶんこの世でもっとも強いらしい人修羅という悪魔に鍛えられたおかげだ。
 人修羅を通して契約を結んだ仲魔に探らせ、侯爵達が自分を繁栄のための生け贄にするつもりでいることを知った。

 ざけんな! 誰がてめーらのためなんかに死ぬかこのクソ野郎!!

 …で、七年かけて人ならざる何でも屋に育てられたルークによって、あんなことやこんなことも含めて散々躾を加えた結果、どうやらキムラスカの上部+大詠師モース(もとい白豚)は、預言通りに事を進めることをやめたらしい。
 今ではいいルークのも同然である。




 話を変えて、ルークが荒れているのは別の理由であった。




 屋敷での生活にも慣れ、うっとうしい髭…もといヴァンという男とつまらない剣の稽古をやらされていた時だ。
 不思議な…けれど耳障りな歌が聞こえてきて、ルーク以外の人間が次々に膝をつく中、その女が現れて、ヴァンに攻撃をしかけた。
 そこまではいい。そこまでは…。しかし、ここからがルークの災難の始まりだった。

 ヴァンがあろうことか、手元が狂ったんだろうが、ティアという女をよそ見していたルークの方に弾き飛ばしてしまったのだ。
 その結果何が起こったかというと、二人の間で超振動が起こって、あっというまに光に包まれてその場から消えてしまったのだ。ティアとともに。

 飛ばされた先は、見知らぬ、けれどルークが連れてこられた世界であることは間違いないが、どこかの渓谷だった。
 そばにティアも倒れていたので、むかつくので一蹴り入れたら起きた。
 女を蹴ったことに対する詫びはこちらにはあったが、それでもあまりにも向こうに貴族の屋敷に進入し、このような事態になったことへの反省の色がなさ過ぎて、まずここでルークの機嫌がすこぶる悪くなった。
 見たところヴァンと同じオラクルに所属する軍人らしいが、歌を歌っていたということは音律師という役どころと見た。
 だがしかしだ…、いくらなんでも被害者を前線に立たせようというのはいかがなものかと。
 しかし、どう見てもティアに前線で戦っていくだけの力がないのは見えみえだから、自分の命を守るために戦わざる負えない。断じてティアを守るため何かじゃない!!(詠唱中は守ってと叫んでくるのも無視。自分の身ぐらい守れ)
 俺の影に隠れて心配する仲魔の気配が伝わってくるが、彼らを呼ぶほどでもないし、何よりこの苛立ちを発散したかった。だからルークは進んで自ら戦った。
「とても貴族とは思えない太刀筋ね。見直したわ」

 ピキッ


 …ダンテ達へ。俺は生まれて初めて、殺したい女ができました。


 ルークは怒りを通り越して涙が出てきてしまった。




 けれど、残念なことにルークの災難はまだまだこれからのことだった。


 馬車を乗り間違えたのは土地勘がなかった自分の責任もある。それについては反省すべきは自身にある。
 問題はその後にあった出来事だ。

 まずエンゲーブの村でおいしそうなリンゴをルークが買ったまではいいが、何やら騒ぎがあったので見に行ったら、何故かティアが食料泥棒の犯人じゃないかと疑われてつかまっていた。ルークは当然無視をしようとしたが、ティアに見つかってしまい助けを求められ、疑いがこちらに向いてしまい、どう切り抜けようか思案していたところに、ローレライ教団の最高指導者イオンとマルクト軍の大佐ジェイドが現れ、なんとかなった。
 その後、まあ色々あってティアに無理やり引きずられる形でイオンとともにチーグルの森に行き、そこでライガクイーンの交渉が行われるはずだった。
 だが…。

「ライガの子供は人間の肉を好むの。このままじゃエンゲーブが危ないわ! 今ここで退治すべきよ!!」
「っ、…残酷なようですが仕方がありません」

「ちょっと待て!!!!」

 あまりのことにルークは叫んだ。
 自分達(ルークは無理矢理に)は、チーグル達に頼まれてライガと交渉して立ち去ってもらうために来たのだ。決して彼らを退治するため何かじゃないはずだ。
 なのにチーグル達の頼みを快く受けた者達が、それを破って退治しようとしているのだ。叫ばないでどうする。
「おまえら、チーグル達が言ったこと聞いてねぇだろ!! あいつらはクイーン達を退治しろだなんて言ってねぇ!!」
「ルーク、なんてことをいうの! このままじゃエンゲーブが危ないのよ!! 状況分かってる!?」
「分かってねぇのはてめぇらだ!!」
「いい加減にして!」
「ー危ない!」
「っ、ちぃっ!!」
 ティアとの口論の合間に、イオンが叫んだおかげで、クイーンに対して背を向けていたルークは、その背に振り下ろされたクイーンの爪をかろうじて避けることができた。
「おい、ブタザル! 俺の言葉をあいつに伝えろ!! 新しい住処を見つけてやるから、ここから出てってくれってな!! でなきゃあんた達は人間に退治されちまうぞって言え!!」
「はいですの!!」
 ミュウがクイーンにルークの言葉を伝えようとした。
 しかしその直後、何かに気づいて急に動いたクイーンの巨体に無慈悲にも譜術が放たれ、クイーンは断末魔の声をあげて倒れた。
 それをまじかで見たルークは、声にならない叫び声をあげて、見るも無残な姿になってしまったクイーンに駆け寄っていた。
 かすかにだが、まだ生きている。これもクイーンがライガの群れを統率するボスだからなのだろう、凄まじい生命力だ。避けようとすれば避けれたはずなのに、避けなかったのは卵を守るためだった。
 身を徹して我が子を守るクイーンに、ルークは唇を噛み、譜術を放った張本人を睨んだ。
「いや〜、苦戦しているようでしたので…」
「ラクシュミ!!」
 悪びれもなく肩をすくめるジェイドの言葉を待たず、ルークは仲魔を呼び出した。
 天女を思わせる悪魔がすぐさま現れ、やはり状況を見ていたからか、すぐに回復魔法をクイーンに施し、あっというまにクイーンを蘇らせた。
 呻き声をあげて目を覚ましたクイーンの首に、ルークが抱きつくと、クイーンはきょとんとした様子で硬直した。
「ごめ…、ごめんな…。あんた達は悪くないのに…」
『…人間よ。何故泣く? 私達は貴様らにとって禍なのだろう? なのになぜ』
「泣いちゃだめなのかよ! 禍だとかなんて誰が決めることじゃねぇだろ…」
『……全く、おかしな人間だ』
 クイーンが呆れたように鼻息を漏らした。
『いいだろう…。私達はこの地から出て行ってやる。その代り、安心して子供達を育てられる土地を探せ。それが条件だ』
「分かった! 任せとけ!! 俺には強い味方(仲魔)がいるんだからな」
 立ち上がったクイーンに、涙を拭ったルークがニッと笑って親指を立てて見せた。
「よかったですのー!」
 ミュウが飛び跳ねて喜んだ。他の者達は、ただ茫然としているだけだった。

 こうしてライガ達はチーグルの森から出て行ってくれた。

 ことの原因になったミュウは、罰として一年間追放されることになり、ルークへの恩があるからという理由でルークについていくことになった。
 ちなみに、チーグル達はルークに感謝したが、ライガ達を退治しようとしたティア達には言わなかった。


「あの…、ルーク。あなたは、魔物の言葉が分かるのですか?」
「へっ?」

 ルークは、あの時必死で覚えていなかったが、どうやらいつのまにか魔物と意思の疎通を行っていたということが、イオンに言われて分かった。





「(そういえばこっち来てから、ピシャーチャみたいな物体口調の奴と喋ってねーからな。要領忘れたんだな…)」


 ルークはそう思いながら頭にミュウを乗せて森を抜けようとしたのだが、今度はジェイド達マルクト軍に拘束されることになった…。





 ……神様。これは俺の忍耐力を試すための試練なのですか?




 タルタロス船内に連行され、ジェイドとイオンから和平の取り次ぎをしてもらえないかという要望を聞いたルークは、タタル渓谷からチーグルの森までの間に使い果たし気力を回復させることを優先することにした。
 そもそも、ジェイドの交渉内容に頷けるはずがなかったので…。



「お断りします」

「…では、不法入国罪で拘束させていただきます。衛兵!」



 顔を青ざめさせて、けれどそれでも従わなければならない兵達のことを、ルークは哀れに思ったが、まずはゆっくり休んで気力と体力を回復させるために仮眠をとることにした。











あとがき

 とても細かい設定をくださりありがとうございます。
 …ですが、書いていて無駄に長々となってしまいこのようなオップション話がついてしまいました…。

 ここでのルークは、何でも屋稼業をするうえで必要になるだろう教育を人修羅から徹底的に叩き込まれているので、いきなり貴族社会に放り出されてもどうにか馴染んだんです。
 ダンテの周囲がぶっそうなのもあって、冷静に物事を判断して対処する能力も高いということで。
 さらに仲魔達の力を借りて、キムラスカとモースを教育(調教?)。
 ライガクイーンのところは、ルークの優しさを出したくてああいう展開にしてみました。
 ラクシュミにしたのは、単に回復に優れていて、かつ強力な悪魔という条件で攻略本から探した結果です。(リカームドラにメディアラハンも使えるのですから回復役としては最適かと)
 仲魔は、この他にもいます。後々出てこさせます。

 →中編
 中盤でもまだダンテ達は出ません。







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