60000ヒット記念企画で、トーリ・スガル様のリクエスト『TOAの後日談で、ルークが別の世界(できればスパロボMXか戦国BASARA)に移り住む話』
(※スパロボMXか、戦国BASARAかということでしたので、BASARAの方にしました)
(※移住済みで、慶次との対話です。超短文)
『今日の置き手紙』(お題提供:凍傷少年)
ひっそりとした山奥に、一人の派手な格好をした男が入って行った。
男は土産物の菓子を包んだものを抱えて、人の滅多に通らないような草だらけの道を躊躇なく進んでいく。
柔らかな日差しが森の木々の間を照らし、心地よい涼しさと温かさに、男は口元を和らげた。
やがて少しあけた場所に、ひっそりと佇む一軒の家に男は辿り着いた。
「おーーーい!! ルークー、生きてっかー!」
「……そんな大声出さなくても聞こえるってば、慶次」
家の裏から、金色を帯びた鮮やかな朱い髪を持つ青年がやってきた。
縁側で、慶次が持ってきた菓子を包んだ竹皮の包みを広げ、ルークが入れたお茶を飲む。
「元気にしてっか?」
「見れば分かるだろ。そういう慶次こそ、相変わらず放浪してるんだろ? 楽しいか?」
「まつ姉ちゃんと利がうるさいけど、それさえなきゃ結構楽しいぞ。ルークもやってみたら?」
「俺みたいな余所の世界の奴がおちおち外歩けると思うか?」
「そんなの別に関係ないだろ?」
「慶次は気楽でいいけど。現実はそうはいかないんだっつーの」
「そういえば何でルークは、余所から来たんだ?」
慶次が素朴な疑問として聞いたつもりだったが、途端ルークの表情が固まったのを見て、何か触れてはならないことだったと察し、慶次は疑問を訂正しようとしたが、それをルーク本人が止めた。
どこか自虐的な笑みを浮かべたルークは、慶次に語り始めた。
かつて自分が生きてきた世界について…。
未来の繁栄のための生贄として作り出されたこと。
束縛され、閉ざされた生活のこと。
無理やり放り出された、血生臭い戦い。
裏切られ、罪を罵倒され、捨てられて、変わることを強制させられ、救済のために死を求められ、死ぬ瞬間まで自分が自分であることすら認められなかったこと。
自分と同じ力を持つ音素の集合体の厚意で蘇らされたこと。
しかし自分は、そんなことを欠片だって望んじゃいなかったことを、ルークは隠すことなく語った。
あんまりなルークの境遇に、言葉を無くす慶次に、ルークは微笑んだ。
「信じられないだろうけどさ。それは別にいいよ」
「…ルーク」
「違う世界があって、そこに行く術があるって知って、俺はすぐ来たんだ。もといた世界の空気が吸わないで済むならそれでよかったんだ」
「ルーク」
「けど…慶次に会えて、俺、始めて天に感謝したんだ」
「?」
ルークは慶次の顔をまっすぐ見て、嬉しそうに笑った。
「こうして、俺と向き合って、話を聞いてくれる。たったそれだけのことが、あそこにはなかったから、俺今最高に幸せだ」
ありがとう
至高の幸せだと言わんばかりの、その感謝の言葉と笑顔に、慶次は返す言葉が見つからなかった。
やがて、居心地悪そうに頭を掻き。
「馬鹿野郎…。何でそれ早く言わなかったんだよ」
「だって…」
「俺が信用できなかったのか? …そうだよな?」
慶次がそう言うと、ルークはまた自虐的に笑った。
「そりゃ仕方ねえ。そんな目にあったら誰だって信じられなくなって当然だしな。でもこれで少しは楽になっただろ?」
「…うん」
「俺は絶対ルークを見捨てたりなんかしねぇからな。俺だけじゃねぇ。利やまつ姉ちゃんにも言えば、俺と同じこと言うだろうし。いつでも頼ってくれよ」
「……いいのかよ?」
「俺がいいって言うんだから、いいんだよ!!!!」
「…慶次って、マジでアホだよな」
「おい、なんだよそれ!」
「でも、そういうとこ、俺好きだ」
むくれる慶次を見て、ルークはクスクスと笑った。
森の中に佇む一軒家に、暮らす場所を移した青年の傷は、こうして少しずつ癒されつつあった。
あとがき
穏やかな時間をイメージして描きたかったのですが、難しい…。
むしろ慶次の口調が分からない…。
TOA後日談のあとだと、慶次が一番話相手として妥当かなと思い、話相手にしてみました。
ここでのルークは、TOA世界のあれこれでスレて人間不信。
慶次は、それを受け止めて今後は構い倒すと思います。ついでの前田家某夫妻も参戦すると思う。いっそ家族になればいい。
……リクの内容をかなり外してしまった感がやはり否めません…。
トーリ・スガル様、このような出来になりました。トーリ・スガル様のみお持ち帰りください。
管理人があまりのリク内容の外れ方に自己嫌悪して、書いた続編【自由意志だって尊重してみせよう】もあります。
…なんかもう、ダメダメな管理人でごめんなさい。
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