60000ヒット記念企画で、ノア様のリクエスト『ルークがアスラとして存在している(エンブリオン所属)DDS1世界に崩壊後の同行者+灰がトリップして来ると言うお話』を書き上げましたが、ちょっといまいちだったような気がするので、改訂版をもう一つ。
※前の分はDDS特有のスプラッターな感じがなかったので、強くしてみました。内容も少し変えました。
※実際彼らに遭遇したらこういう目にあうだろうという想像で。
『雑音の輪廻に巻き込まれる』(改訂版)(お題提供:DEVIOUSDDDS!)
ザー ザー ザー ザー
「ここ…は?」
誰かがそう呟いた。
自分達が乗るタルタロスは、ユリアシティから出発して外殻大地へ打ち上げられたはずだった。
確かに打ち上げられた時の衝撃があった。
だが…、それが終わった後、目にした光景は、打ち上げられた先の場所、海ではなかった。
見たこともない、荒廃した大地は、障気が噴き出して汚染された土地を思わせ、そこに灰色の空から降る雨がそれを強調していた。
タルタロスは、その大地の上にやや斜めの状態で鎮座していた。
「ここは…外郭大地? 何が起こったのですの!?」
「違う…! ここは外殻大地じゃねぇ!!」
「そうですね。先ほどタルタロスが打ち出された穴はありませんし…。ひょっとして、記憶粒子で打ち上げた際に別の次元に飛ばされたのでしょうかねv」
「大佐! そんな悠長なこと言ってる場合じゃないですよ〜!!」
「そんな、今はそれどこじゃないのに…!」
「ん? あれは?」
ガイが遠くの空を指して言った。
その先には、街らしきものがあった。
「……このままここにいても仕方がありませんね。あそこへ行ってみましょう。何か情報がつかめるかもしれません」
最年長のジェイドの提案で、タルタロスからも見えるその集落らしき場所へと向かうことになった。
***
「……町っていうか、廃墟って感じじゃない、これ?」
土砂降りの雨の中、岩と見覚えがあるようなないようなガラクタが点々としている荒野を横切って辿り着いた場所は、おおよそ人が住んでいるとは思えない場所だった。
だが近づくにつれて、あちこちから蒸気や、明かりがもれているのが見えたので、間違いなく誰かが住んでいるのは見受けられた。
……彼らは不幸にも、その場所、否、迷い込んでしまったこの世界そのものが持つ恐怖に気づくことができなかった。
***
人気のないうえに、生活感もないその場所をティア達は進んで行った。
けれど確かに何かがいるという気配だけは感じる。
「誰かいませんかー」
キョロキョロ見て回っていても埒があかないので、ガイが周囲に声をかけてみた。
だが声は返ってこない。
けれど、その時。
『ヒ〜ホ〜』
こちらに対しての返答とはとれない声が聞こえた。
「誰かいる!?」
「まあ、いるでしょうね。気配だけはありますから」
「だったら、とっとと探せばいいだろうが!」
『ヒホッ!!!!』
「「「「「!?」」」」」
同じ存在だと思われる声が、短い悲鳴に変わった。
それとともに爆音や、ものすごい音が響き、それは徐々にこちらへと向かっていた。
そして近くにあったへしゃげかけた扉が吹っ飛び、そこから白い小さな雪だるまみたいなものが目の前を走り抜けた。
何かから一目散に逃げて来ているように…。
だが直後、雪だるまが出てきた扉の向こうから炎の塊が飛んできて、それは見事に雪だるまに当たり、雪だるまは悲鳴をあげて炎に包まれて転がった。
『チッ。手間取らせやがって…』
ズシン、ズシンと重い足音が壊された扉の向こうから近付いてくる。
そして灰色空の下、薄暗い中にその姿が現れた。
ティア達は、その姿を見て目を見開いた。
普通の人間よりも格段に大きい背丈、真紅の体、双頭、たくましい手からは鉤づめのようなものが生えている。
赤いそれは、二本足で歩行し、ティア達に目もくれることなく、先程の炎で致命傷を負い息も絶え絶えな雪だるまに向かって行った。
『ヒ…、ゆ…許してくれホ〜…!』
ヨロヨロと顔をあげながら、雪だるまみたいなそれは命乞いをした。
だが赤いそれは二つある頭を、口をニヤリと歪めた。
『負けた奴は喰われるって知ってんだろうが!』
『ヒホー!!』
赤いそれは乱暴に雪だるまの頭を鷲掴み。そして…。
グシャ
嫌な音が響いた。
赤いそれが雪だるまの頭をその口で噛み砕いて、租借した。
雪だるまから白い体からは想像もできない赤黒い液体が溢れ、小さい体がビクビクと痙攣した。
赤いそれが二つの頭の口で残りも食いちぎり、赤黒い体液と一緒に出てくる臓器も溢さない様口に運び、骨も噛み砕いて飲み込んだ。
『…足りねぇな』
食べ終わって元々赤い体の色とは違う赤い色をグイッと拭い、赤いそれが呟いた。
そしてその顔が、固まっているティア達に向けられた。
『お、ちょうどいいじゃねぇか。さっきの奴より食いでが…」
「い……いぃやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
目の前で起こった惨事に、固まっていたナタリアが甲高い悲鳴をあげた。
『ぐぁ、うるせ…! 静かにしろ!! って、逃げんなこら!!!!!』
赤いそれが大口をあけて怒鳴った。
ティア達は悲鳴を上げ続けるナタリアを連れてその場から逃げた。
そしてある程度走ったところで物陰に隠れ、一旦休憩した。
「ハァハァ…、何、あれ!? ねぇ、ちょっと、あれなんだったの!?」
「…食べ……た…。食べてた…」
「とりあえず、…明らかに我々が知っている魔物とは異なるものであることも分かりましたし」
「それでは、この場所にはああいう魔物が山ほど…」
イオンが呟いた言葉に、全員が蒼白した。
ドガッ!
直後、建物の壁が破壊された。
『ちょこまか逃げやがって…』
その向こうから先程出くわした赤い魔物が現れた。
「くっ、どうやら倒さなければ逃げられそうもありませんよ」
ジェイドが槍を出して壁の穴から出てくる赤い魔物に、その先端を向けた。
ガイもアッシュも武器を抜いて構えた。
赤い魔物は彼らのその体制に、低く唸り。
『なんだ、その状態でやるってのか? いいぜ。そうじゃなきゃ喰いがいがねぇしな!!』
赤い魔物が拳を叩いて、咆哮をあげた。
ビリビリと震える空気が、この赤い魔物の力量を物語るが、だが引くわけにはいかない。
アッシュが剣で斬りかかると、赤い魔物は拳を握り鉤爪でそれを受け止め、力任せにアッシュを弾き飛ばした。
弾かれて体制を崩したアッシュに、魔物は口から炎を吐いて浴びせようとしたが、それはガイの攻撃で中断された。
だが皮が固いのか、ガイの剣技は大した痛手になっていないようだ。
ジェイドがアッシュとガイが魔物の注意をそらしている間に譜術を使おうとしたが…、ジェイドは詠唱を突然やめて目を見開いた。
「そこまでだエンブリオン!!」
と、その時、変わった衣装をまとった人間達が現れた。
『あ?』
「アグニが一人とは好都合だ!」
「野郎どもやっちまえ!!」
すると人間達の姿が光に包まれ、そして全く違う魔物の姿へと変わった。
ティア達は理解した。この世界にいる魔物は最初は人間の姿をしていて、それが変身したものだと。
アグニと呼ばれた魔物が、上等だ!っとティア達との戦いを放棄して、襲ってきた別の魔物と戦い始めた。
相手は多数で、こちらは一人。だが全く引けをとっていない。……いやむしろ圧倒していた。
『グハッ! こ…ここまでとは…』
『大したことないくせに挑んでくるからだろうが』
『ギャァァァ! やめ…、俺はまだ生きて…』
『関係ねぇよ!』
『ぅぶふ、ぐ、ヒぎ、ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!!!!!!!!』
まだ意識を失ってもいない魔物達を、アグニはよりにもよって腹等の死に難いところから貪り喰った。しかもアグニは双頭であるため、絶え間なく噛みちぎられ続けなければならない。
アグニが喰うことに夢中になっているところをジェイドが、固い皮膚の隙間と思われる箇所に槍を突き刺そうとしたが…。
『邪魔すんな!!』
巨体からは想像もできない素早い動きでアグニが反応し、ジェイドの槍を口で止めて、そのうえ噛み砕いてしまった。
ジェイドにアグニの手が伸ばされようとした直後、ガイが割って入ってそれを阻止したが、ガイの剣の刃をアグニが直接手で握って止めてしまった。
『痛くも痒くもないぜ。これなら銃で撃たれた方がマシだな』
刃を握られて止められてしまったガイの間近でアグニが言い、直後ガイの体に衝撃が走り、腹部に食い込んだ拳と鉤爪が捻じり込まれ、ガイは驚愕に目を見開き口から大量の血を吐きだすが、アグニの手はガイの苦痛など気にする様子も微塵もなく、ガイの腹から腸を引きづり出した。
アッシュが絶叫をあげて、アグニの背後から斬りかかったが、そのアッシュの背に鞭のような腕が飛んできてアッシュの背を叩き、アッシュは地に伏した。
「キャアア!!」
ジェイドの背後で悲鳴があがった。
振り返ると、脳天から縦に空いた大きな口に、マントのような羽で上半身を覆った魔物がイオンを片足で踏みつけるようにして捕えていた。
「イオン様!」
アニスがトクナガを手にして巨大化させようとしたが…。
「あ、あれ!? なんで大きくならな…、ーっ!!!!」
慌てるアニスに向かって、イオンを踏みつけていた魔物が、イオンから足をどけて、クルリと舞うように回転しながら一瞬で距離をつめ、その足でアニスの腹にまっすぐ突きのような蹴りを入れて壁に叩きつけた。
ゴホッと血を吐くアニスは、ぐったりと壁にもたれた。
ティアが杖を構えて譜歌を歌った。
『…歌? …だがセラの歌と歌詞が違う』
マントみたいな羽を持つ魔物は、コキコキと首を動かし、そう言った。
「! 音素が集まらない…!?」
譜歌が効果を出さないことに焦る。
そんなティアを、斜めから鋭い刃物のようなものが切り裂き鮮血が飛んだ、ティアは何が起こったのか分らぬまま地に倒れた。だがまだ息はあった。
ティアを切ったと思われるまるで王冠を思わせる頭部を持つ魔物が、両腕から折りたたみ式の刃物を出し、その片腕の刃にはティアの血が付いてた。
「あ…ああ…」
ガクガクと震えるナタリアの眼前に、ふわりと空から水色の魔物が降りてきた。
『サーフのアニキ〜。こいつらだよ。あの変なとこにいたの』
『見慣れない格好だな…』
サーフと呼ばれた魔物が震えているナタリアを見下ろして言った。
『大して重要性もなさそうだ。さっさと喰ってしまうぞ』
「おーい!」
そこへ遠くから走ってくる一人の朱い青年の姿があった。
地に伏していたイオンは、その聞き覚えのある声に、ノロノロと目をあけて、そして見開いた。
「俺を置いていくなよな!」
『ルークが遅いんだって』
水色の魔物の姿があっという間に人間の、ルークと同じくらいの年頃で、青い髪をいくつもの三つ網にした風変りな髪型にしている青年に変わった。
「乗せてってくれたっていいだろシエロ!」
「やだ」
「なんでだよケチ!!」
『二人ともやめなさい』
腕が鞭のように伸びる、胸が口になっている魔物が二人の喧嘩を止めた。
「それよりさ、なんか美味そうな獲物がとれてんじゃん。俺も喰っていいか?」
ルークは涎を垂らして、キラキラと目を輝かせた。
イオンは、ただただ茫然とルークと呼ばれている朱い青年を見ているしかできなかった。
イオンは、あのとき…アグゼリュスでヴァンに何かを言われて超振動を使わされたルークが、その後力尽きて音素に還ってしまったのを見た。
それを見ていなかったティア達は、ルークの死を知らず、アグゼリュスが崩落した原因と、アッシュから彼がレプリカだと知らされ彼を貶した。
イオンは、何も言いだせなかった。…ルークがいなくなってしまったというショックが抜けなくて。
けれど、今目の前にいる彼は…?
ルークと、今自分達を襲い傷つけた魔物(人間?)から呼ばれている彼は…、誰なのか。
他人の空似というには、あまりにも似ていた。悲しいぐらい。
金色を帯びた朱い長い髪も、翡翠の瞳も、笑顔も…。
「ルー…ク」
「じゃ、俺こいつにする」
そう言ってルークが、イオンを掴みあげた。
ああ…、これは罰なのでしょうか。
同じレプリカだと感じて知っていながら、彼を救うことができなかった自分への。
でも…。
「いっただきまーすv」
みるみるうちに、全く違う魔物の姿へと変わり、口をあけるルーク。
ルークに食べてもらえるなら、本望だと思う、僕がいる
イオンは眼前に迫りくる鋭い牙を他人事のように思いながら、そっと目を閉じると、一筋の涙が汚れた頬を伝って落ちた。
あとがき
改訂したのを書いておきながら…、いまいちな出来に、涙が出そう!
もっとこう…血しぶきあがってるのを目指したかったんですが…スランプ…。うう…。
それでもまだ最初のイメージには近づいたと思う。問答無用のDDSキャラ達。ヒートが出張っている。
たぶんここでの彼らのレベルは60以上。そしてたぶんヒートは物理デストロイヤを持っている。
最後の方は、イオン→ルークっぽいかな?
他のキャラもおいしくいただかれました。
戻る