60000ヒット記念企画で、拍手からのリクエスト『「俺のペット」設定のアッシュが同行者を断罪し、ルークに褒美をもらう話』




(※元ネタはギャグなのに、どうしても暗い話になってしまうのは管理人の悪い癖です…)
(※実際にするわけじゃないんですが、エロい描写を目指しました)
(※ルークが黒いというよりは、病んでいるので注意!!)
(※戒め表現は、薄めです)




























『俺に好かれたいのなら息を止めろ。瞬きをするな』(お題提供:


















 とある宿の一室に、二つの赤がいた。

 一人の“紅”は寝台の前で、まるで犬のように四つん這いになり。

 もう一人は“朱”は、寝台の上で、クッションを下にして堂々と寝そべり、足を組んでもう一人の紅を見下し、意地の悪い笑みを浮かべていた。

 髪の色こそ多少違えど、全く作りの同じ顔、翡翠の瞳に見つめられ、床にいる“紅”は酷く高揚していた。普段の彼を知る者なら本当に同一人物なのかと疑うだろう。
 うずうずと息を飲んで何かを待ち焦がれている様子の“紅”に、“朱”はニヤリと太い笑みを浮かべ、ついに許可を出した。

「来いよ、アッシュ」

 その瞬間、アッシュは寝台の上にあがり、“朱”に縋りつくように抱きついた。
 そんなアッシュを受け止め、彼はくっくっと笑った。
「オリジナル様あろうものが、自分の劣化レプリカにこんな醜態さらしてるなんて、髭の野郎が知ったらどんな顔するだろうな?」
「ルーク…ルーク…」
 うわ言のように本来の名前であるはずの言葉を口にするアッシュの鮮血色の髪をすいてやりながら、ルークはますます愉快そうに笑った。
 サラサラと、下手な女よりもずっと指通りの良い鮮血色の髪がルーク指の間からこぼれていく。
「昼間の時のご褒美だ。けど、それ以上は、ダメだぞ?」
 普段触らせてやらない分、御褒美にこうして抱きつかせてやるだけでアッシュは十分過ぎるのか、何も言わない。
 安上がりな奴だなと、ルークは内心嘲った。
 こんな男との約束に固執していたあの偽姫の顔が思い浮かぶ。
 あれほど焦がれていた婚約者が、己の複製品に並みならぬ思いを抱き、それまで持っていた物をあっさりと全て投げ捨ててしまえるほどの馬鹿だと知らされた時の、彼女のあの顔。
 アッシュがそうなったのは、ルークの責任ではないのに、怒りの矛先をルークに向けた際に、そんなナタリアに牙を剥いたアッシュが信じられなくてついに貧血を起こして倒れた様にルークはつい笑ってしまったものだ。別にアッシュの思いを独り占めしたとかそういう意味で勝ち誇って笑ったのではない。ただ幻想の中のアッシュと、現実のアッシュとの違いに耐えられず悲劇のヒロインよろしく現実逃避したナタリアの様が面白かっただけだ。
 ナタリアからアッシュを奪ったと、馬鹿な同行者である女達はルークに酷いだの何だのと、悲劇のヒロイン様を盛り立てる役回りをする始末で、それはただただルークを愉快にしただけで終わった。
 ルークが望んでいないにも関わらず、自ら御主人様思いの駄犬も当然にルークを庇い、唸るアッシュの様も中々いいとルークは珍しく感じて、その夜こうして褒美をくれてやっているのである。偽姫の方は、今頃女達がフィアンセを奪われて涙する悲劇のヒロインを慰めて元気付ける役をして臭い芝居ぶったドラマなんぞをやっているだろう。そんなことはルークの気にすることではない。しかし想像するとあまりの馬鹿らしさに笑いが込み上げてくる。
 次の瞬間、ルークはアッシュを蹴とばして床に落とした。
「…っ、この、誰が許した、コラ?」
 きりりっと眉を吊り上げ、寝台から体を起こすと、アッシュは何故かさっきより息を上気させていた。
 その様子に眉をひそめたルークは、あー…っと納得したように声を漏らし、寝台に座りなおした。
「そうか…、そうだったなぁ。おまえはこっちの方がよかったんだよな〜」
 口元を吊り上げ、左足を伸ばして、アッシュにその素足を示してやる。
 床にはいつくばっていたアッシュは、ピクリっと反応しのろのろと顔をあげた。何かを懇願するようなすがってくる、同じ色の目に、ルークは肩を揺らして笑った。こんな姿を見せたら、偽姫は倒れるどころか怒りにまかせて自分を殺しにかかってくるに違いない。
「舐めろ」
 そう命令してやると、アッシュはルークの左足に手を添えて、何の躊躇もなく舌を這わせようとした。
「下手くそ」
 空いた足でアッシュを蹴とばし、寝台から下りたルークは、蹴ってアッシュを仰向けにし、その首を左足で踏みつけた。
 苦しそうに、だが快感に震えているアッシュの表情を見下ろし、ルークは声をあげて笑いたくなったが堪えた。
「…このまま首の骨折っちまおうか?」
 冗談半分に言ってやると、アッシュが自分の首を踏みつけている左足を掴んで、本当に折ってくれと言わんばかりに引っ張ってきた。
 殺してやりたいと、何度願ったことか。
 預言の生贄の身代わりになるべく作られて、のうのうとダアトで生きているこの男をイメージして、何度稽古用の人形を切り捨ててきたことか。
 しかしいざ眼前にしたアッシュは、俺が与える苦痛を受けて喜び、あまつさえその手で殺されることを望んできた。まるでルークの憎しみと殺意を全て受け止めるべくして自分が存在するのだと言わんばかりに、この男はルークからの暴力を求めて、誰よりも偽りの聖なる焔の存在を望んだ。
 ルークが生まれて七年間募らせてきたものを、この男は別の意味で粉々にしたのだ。
 “愛”などという、決して己には与えられることのなかったものをもって!
「誰が強請ってもいいって言ったんだよ、オリジナル!」
 ルークは表情を歪め、アッシュの手を払い、アッシュを蹴り飛ばした。
「…何かもう、殺す気も失せたぜ」
 あれほど憎んでいた自分のオリジナルであるアッシュに、ルークはもう殺意が失せてきていた。
 自分にこれほどまでに固執し、あまつさえ痛みどころか、殺してほしいとまで強請ってくるこの存在に。そして与えてやることに満たされていくものを感じつつある自分に、心底嫌気がさした。

「殺して何かやるかよ」

 ルークは、アッシュの首を掴んで無理やり体を起こさせた。
「アッシュ…、そんなに俺が欲しいなら、俺を楽しませろ」
 犬にやるように、いい子いい子と頭を撫でてやり。

「そしたら望みどおり、俺がおまえを殺してやる」

 ルークが言った言葉を聞いた瞬間、アッシュが浮かべた表情から見て取れた答えは。

 お安い御用だ

 何事もなかったように立ち上がり、徐に剣を抜いて部屋を出て行った。

「……やっぱ完全同位体だぜ」

 分かってるじゃないか…。
 そう、あの男は、自分のオリジナルであるからこそ、ルークの思いを理解しているのだ。そう…誰よりも…。

 ルークは、床にうつぶせに寝転がり、もうすぐ聞こえてくるであろう悲鳴と、アッシュが持ってくるであろう手土産を想像し、天井に向かって笑い声をあげた。
 ボロボロとこぼれる涙は、笑いすぎて流れたものなのか、それとも…。









あろがき

 ……SMの粋じゃない…なぁ。ジェイドとガイ完全に空気だし。アッシュもほとんど喋ってない。
 これは何願望と言えばいいのか?
 私的には、直接的な描写よりもこういう方がエロく感じるのですが。

 リクエストをくださった方のみお持ち帰りください。御不満でしたら書き直しも検討します。リクエストありがとうございました。






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