60000ヒット記念企画で、ノア様のリクエスト『ルークがアスラとして存在している(エンブリオン所属)DDS1世界に崩壊後の同行者+灰がトリップして来ると言うお話』



※DDSという作品の都合上、暴力表現あり。エンブリオンメンバー(+ルーク)が人でなしです。











『雑音の輪廻に巻き込まれる』(お題提供:DEVIOUSDDDS!

















 ザー ザー ザー ザー





「ここ…は?」

 誰かがそう呟いた。

 自分達が乗るタルタロスは、ユリアシティから出発して外殻大地へ打ち上げられたはずだった。
 確かに打ち上げられた時の衝撃があった。
 だが…、それが終わった後、目にした光景は、打ち上げられた先の場所、海ではなかった。
 見たこともない、荒廃した大地は、障気が噴き出して汚染された土地を思わせ、そこに灰色の空から降る雨がそれを強調していた。
 タルタロスは、その大地の上にやや斜めの状態で鎮座していた。
「ここは…外郭大地? 何が起こったのですの!?」
「違う…! ここは外殻大地じゃねぇ!!」
「そうですね。先ほどタルタロスが打ち出された穴はありませんし…。ひょっとして、記憶粒子で打ち上げた際に別の次元に飛ばされたのでしょうかねv」
「大佐! そんな悠長なこと言ってる場合じゃないですよ〜!!」
「そんな、今はそれどこじゃないのに…!」
「ん? あれは?」
 ガイが遠くの空を指して言った。
 すると遠くから、何かがものすごいスピードでこちらに迫ってきていた。
 近づくにつれ、その姿がはっきりと目に映り、体の大半が水色のそれは上空で一時停止して、こちらを見下ろしてきた。
『なんだ、こりゃ? 変なものが落ちてるぜ』
「しゃ、喋った!!」
『喋っちゃだめかよ? てゆーか、おまえらどこのトライブ? 見た事ねえカラーだなぁ?』
 上空で羽ばたくでも、噴射をしているわけでもなく、曲がらない両腕を持つそれは宙に浮いたまま訝しげに首を傾げて聞いてくる。
『ま、いっか』
 そう言って、それは宙で方向転換して元来た方向へ飛んで行った。
 残されたティア達は、茫然とそれを見ているしかなかった。
「……このままここにいても仕方がありませんね。あの妙な魔物が飛んで行った先へ行ってみましょう。何か情報がつかめるかもしれません」
 最年長のジェイドの提案で、タルタロスからも見える、水色の空飛ぶ魔物が飛んで行った先と思われる集落らしき場所へと向かうことになった。




***




「……町っていうか、廃墟って感じじゃない、これ?」
 土砂降りの雨の中、岩と見覚えがあるようなないようなガラクタが点々としている荒野を横切って辿り着いた場所は、おおよそ人が住んでいるとは思えない場所だった。
 だが近づくにつれて、あちこちから蒸気や、明かりがもれているのが見えたので、間違いなく誰かが住んでいるのは見受けられた。
 ……タルタロスで見た水色の空飛ぶ魔物のようなものの住み家という可能性もあったが、言葉を喋っていたし、こちらの言葉に返事を返していたので、コミュニケーションは取れることは証明済みだ。
 話せば分かる。
 彼らはそんな軽い気持ちでその場所へ入って行った。

 ……自分達が大儀だと信じていることのために行動しているのだという思考であったために、その場所、否、迷い込んでしまったこの世界そのものが持つ恐怖に気づくことができなかった。




「あ、人だわ! ……えっ?」

 ティアが物影から出てきた人の姿を見て、硬直した。
 だがすぐにその口から言葉が飛び出した。
「ルーク!?」
「えーー! なんでお坊ちゃんがいるわけ!? ってか、何あの変な格好!」
「は、劣化野郎はセンスまで劣化してやがるな!」
「ルーク、おまえどうして…?」
「おやおや、ユリアシティで寝ていたと思ったらこんなところでコスプレですか?」
「……ルーク…?」
 イオンだけが胸に手を当てて、探るようにルークによく似た彼を見つめていた。

 口々に吐きだされる言葉に、ルークと呼ばれた朱い髪の少年は無表情だった顔をしかめ、腕組をした。

「……誰だおまえら?」

 不機嫌な口調で、そう言った。
「まあ、何をとぼけているのですか! アグゼリュスのことを忘れただなんて言わせませんわよ!!」
「そうだよ! このバケモノ!!」
「バケモノだってのは認めるが、それよりマジでおまえら誰だよ? なんで俺の名前知ってんだ?」
「最低ね。そうやって言いわけをするなんて」
「…人話を聞けよ。見たところどこのトライブでもなさそうだな…。ニュービーか?」
「先ほどから妙なことを言いますね? とらいぶだの、にゅーびーだの」
「はぁ? トライブ知らねえの!? どっから来たんだよマジで!!」
「ルーク、俺達のことを忘れたのか!?」
「忘れたも何も知らねえ。俺はずっとこのジャンクヤードに住んでるけど?」
「じゃんく、やーど?」
「ルークでは、…ないのですね?」
「赤の他人と間違えるなつーの。なあ、ボース。こいつらどうする?」
 ティア達がハッとして振り返った時には、ルークと同じような衣装をまとった若者達が重火器を手に、銃口の先をティア達に向けていた。
「シエロからの報告で聞いてはいたが…、ノコノコ自分から来てくれたから手間が省けたな」
 銀髪の男サーフが進み出て、値踏みするようにティア達を見た。
「な、なんの真似ですの!? わたくしたちに武器を向けるなんて、なんて野蛮な…っキャァ!!」
「ナタリア!!」
 ナタリアの足元に一発銃が発射され、驚いたナタリアが尻もちをつき、それを見て怒ったアッシュが剣を抜いて眼前にいたサーフ斬りかかったが、横から頭にフードを被った男の左ハイキックを受けて地に沈んだ。
「…何故変化しない?」
 アッシュを踏みつけながらゲイルが単調な口調で言った。
「うぐ…屑が…!」
「……フン」
 ゲイルの緑色の目が少し細められた。
 一撃でノックアウトさせられながらも悪態をついて睨みあげてくるアッシュに、ゲイルはこれといって表情を動かすことなく、アッシュを踏みつける自分の左足を上げ、途端起き上がろうとするアッシュをそのまま何度もダン、ダンと力一杯踏みつけ続けた。
 ティア達の声を無視して、ゲイルはアッシュを問答無用で踏みにじり、骨が折れる嫌な音が響き、アッシュが短い悲鳴とともに血を吐いた。
「サーフ。こいつら妙だぜ? アートマがない」
「えぇ、そんな! アートマがないなんて…」
 燃えるような赤い髪の男が言い、ピンク色の髪をした、左目の方に縫い傷のようなものがある女性が驚いて声をあげた。
「おまえ達は、何者だ?」
 それを聞いてゲイルが言った。
「人に名前を聞くときは、先に名乗るものよ。それよりアッシュを放しなさい!!」
「残念だがその要件は受け入れられない。おまえ達は自分の立場を分かっていないようだ」
 ゲイルは左足でアッシュを踏みつけたまま、アサルトライフルを向けながら言うと、ティアは口惜しそうにけれど負けじと睨んでくる。
「別にそいつをさ、質にいれなくて大丈夫じゃねぇか?」
「…そうだな」
 ルークに言われ、ゲイルはそう言ってアッシュを踏みつけていた左足を使ってティア達の方へ蹴るようにして転がした。ナタリアがすぐにかけつけ、ゲイルではなく何故かルークを睨んだ。
「こうなったら力ずくでも突破するしかないようですね」
 ジェイドが槍を出して構えた。
 ガイも武器を構え、立ち直ったナタリアも弓を手にし、ティアが杖を構えて譜歌を歌い出した。
 歌声が雨が降る中に響くが…。
「これは…歌!?」
「こいつ、セラと同じ…」
「いや、歌詞が違う。歌い方も…。心が安らぐ感じもない」
「!! ど、どうして!?」
 譜歌が効果を発揮しないことにティアは焦った。
 そしてジェイドが素早く呪文を詠唱し、譜術を発動しようとしたが…。
「っ、何故?」
「あ、あれれ!?」
 全く発動しないことにさすがのジェイドも焦りを覚えた。アニスの方はトクナガが巨大化しないことに焦っている。
「はっ? 何がだ。たくっ、拍子ぬけしたぜ。おい、サーフ。こいつら喰っちまっていいだろ?」
「待って、ヒート。アートマがないなんておかしぎるわ!」
「アルジラのその意見には一理ある。それと何か情報を持っている可能性がある」
「ゲイル参謀。こいつらロクな情報持ってなさそうだぞ? だって、トライブとか知らないみたいだし」
 ルークがティア達の横を通って、サーフ達のもとへ行きながら言った。
「そうそう、俺が見に行った時もさ、何も知らなさそうな間抜け面してたぜ?」
「ちょ…ちょっと待てよ! タルタロスに来たのは何か…もっと水色をしてて…」
 ガイが彼らの間で交わされる言葉に疑問を飛ばした。
「本当に知らないようだな…。シエロ。見せてやれ」
「しゃーねーなー」
 シエロはめんどくさそうに言うと、意識を集中した。
 右太ももの奇妙な模様が輝き、光の筋が血管のように全身に広がると、あっというまにタルタロスで見た魔物の姿に変じた。
 それを見たティア達は、自分の目を疑った。
「な…!」
『ヘヘヘヘ、驚いたか? エンブリオンのディアウス様だ、イエーイ!!』
 シエロ…ディアウスが少し宙に浮いた状態でくるりと前に一回転した。
「ヒ…、ば、バケモノ!!!!」
 アニスが後づ去って叫んだ。
『ひでーなぁ…。けどよ、最初はみんなこうじゃなかったんだぜぇ?』
「こいつら俺の姿見ただけでもバケモノって言ったな…」
「そういえば、ルークにやたら突っかかってやがったな…」
 ヒートがぎろりとティア達を睨んだ。
 するとそこへ。
「セラ!」
「ダメ。ルーク、あの人達に近づいちゃだめ!」
 セラが走ってきて、ルークの手を引いてティア達から遠ざけようとした。
 その様子に、この場の空気がより殺気だったものへと一気に変わった。
 唯一ティア達への攻撃をためらっていたアルジラの表情も殺気がにじんでいた。
「……喰っちまっていいよな? さっきから腹が鳴って仕方ねえ…」
 ヒートの目がギラギラと金色に輝き、体の方もみるみる変化し始めた。
「飢えているのはおまえだけではない。全員に行きわたるよう分けることを提案する」
 ゲイルが冷静にそう言いながらも、左足のふくらはぎから変化を始めていた。
「あら、鬼参謀様が珍しいわね。そんな平等な意見を出すなんて」
 胸の部分の模様を光らせながらアルジラが言った。
『あー、もう何でもいいから早く喰おうぜ! 腹減ったーーー!!』
 すでにディアウスに変化しているシエロが、宙に浮いた状態でギャーギャー言っていた。
 ここまで来て自分達が置かれた危険を察したティア達は踵を返して逃げようとした。
『知るか、早者勝ちだ!』
『いただきまーす!!』
 元の姿の一回りぐらい大きいアグニに変化したヒートと、シエロことディアウスがグワッと大口を開けてティア達に襲いかかった。
 だが間一髪のところでティア達は、二人の攻撃から逃れた。
『待ちなさい!』
『逃がすな』
 プリティヴィーに変化したアルジラと、ヴァーユに変化したゲイルがその後を追い、他の面々もそれぞれ変化して追った。
「俺も、喰うー!」
「ルーク、ダメ。ルークが食べたらお腹壊しちゃう」
 それに参加しようとしたルークだが、セラに腕にしがみ付かれるようにして止まれてしまった。
「う〜…」
「ルーク。このあと予定している作戦で優先的に食べていいから、我慢するんだ」
「ボス〜」
 どうやらセラという少女と、ボスの命令は絶対らしく、ルークは仕方なく大人しくなった。
『セラを守れ。ボス命令だ』
 ヴァルナに変化したサーフは、そう言ってからティア達が逃げた方へ行った。

 サーフ達が行ってしまったあと、セラは口惜しそうに呻き声をあげるルークを見上げ、それから斜め後ろの方を見た。
 そこには金色の光の塊が宙に浮いていて、こちらを見ているようにそこに佇んでいた。
 セラは、目を瞑って、ゆっくりと息を吸って吐いてから、目を開けた。そして金色の光をしっかりと見つめて。


 大丈夫。“この子”は、私達が守ります。


 そうセラがルークに聞こえないように囁いた声が届いたのか、金色の光の塊は、嬉しそうにその場をクルクルと何回転もし、やがて空へ向かって飛んで行って消えた。
 セラはそれを手を振って見送った。
「セラ、何やってんだよ?」
「んーん、何でもない。大丈夫だから、ルーク」
「そ、そうか?」
 ルークの問いに首を横に振って答えたセラが、安心させるように笑ってきたので、ルークは思わずしどろもどろしてしまった。
「大丈夫だよ。ルーク…」
 セラはルークの手をしっかりと握って、祈るように呟いた。









あとがき

 ストーリーはお任せしますということだったので、好きに書きました。場面は不明ですが、少なくともゲイルは覚醒している。セラもまだいるので、ブルーティッシュ攻略前くらい…かな。
 場所はムラダーラか、マニプラあたりで。たまたま補給とか、アイテム拾いとかのために来ていた。
 そんな時に、魔界から打ち上げられて何故か(恐らくローレライの差し金)ジャンクヤードに放り出されて、「俺が見てくる」とか言って飛んで来たディアウス(シエロ)に遭遇。
 ディアウスは報告のために帰還。それを追いかけて行ったPT+灰は、そこでアスラルークに遭遇。
 暴言吐いてる間に、エンブリオン(たぶんその他元トライブ勢力も含め)に包囲され、セラの乱入がとどめになって完全に獲物という対象にされたPT+灰は、何とか逃げますが…? ここから先はご想像にお任せします。たぶんどこに逃げても食べられてしまうでしょうから。

 ルークの実力は、エンブリオンの面子に鍛えられて同行者以上というリクエストの詳細があったので、ここでのルークのエンブリオンでの実力は鬼参謀ゲイルと対等、ボス未満。変身姿は…あえて変身させず、ご想像にお任せします。
 ジャンクヤードには音素がないから、譜術・譜歌が使えない(アッシュはグミで復活)。
 同行者はアスラから見れば餌であり、アートマを持たないため対抗手段は無い(アッシュがゲイルにボコボコにされている)。
 譜歌には、セラの歌のような効果はない。
 ルークは、崩壊時に剥離、その後ローレライが記憶を消してジャンクヤード(ニルヴァーナ)に転生させた。
 等々細かい設定を下さったのですが、活かし切れていないような感が拭えません。

 ちなみにイオンは、ルークがアグゼリュスで死んだことを知っていました。そしてアスラルークが自分達が知っているルークじゃないことに気づいて、絶望して逃げるつもりなんかなかったんですが、アニス辺りに引っ張られて一緒に逃げてます。
 ミュウは…、たぶんローレライがジャンクヤードにタルタロスを飛ばす直後にチーグルの森へ帰したってことで。

 そして今気づいたことなんですが、セラってなりはああですが、本当は7歳(DDS2で判明)…。ってことは、ルーク(実年齢7歳)と同い年!?ということに気づいた。


 ノア様、こんな感じになりました。ノア様だけお持ち帰りください。








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