『私にとって 世界の終わりと同意語』(お題提供:はちみつトースト(選択肢お題「崩壊」から抜きだし)
(※熱斗死にネタ、すげー暗い話…。熱斗を失ったロックマンが、熱斗が死ぬ原因になった世界そのものに対し復讐を行うというものなので、当然ロックも…、でも一応救われているような最後です)
(※再度言いますが、管理人はエグゼ未プレイです。漫画版とか某動画サイトとかで見て妄想したものなので激しくキャラが違います)
科学省に常備されているパソコン機器の画面の一つに向かって、光祐一郎は何か言いかけてやめた。
言葉をかけることなどできるだろうか。
今の彼に…。
画面には、白いパネルが敷き詰められたエリアで、膝を抱えて俯いているナビ、ロックマンが映っていた。
ちょうど見えない角度ということもあって、ロックマンの表情は分からないが、纏う雰囲気が全てを拒んでいるのは否応なしに分かる。
事の発端は、つい2年前のことだ。
熱斗が死んだ。
ロックマンとの見事なコンビネーションで、幾多の事件に立ち向かい、ネットセイバーとして活躍してきた。
だがそれが熱斗を死に至らしめてしまった。
ある事件を担当した際に、いつものようにロックマンとのフルシンクロでウィルスを除去したはずだった。
やけに弱いウィルスだったという印象しかない大したことのない事件で済ませてしまったのが仇になった。
そのウィルスは確かにもたらす被害こそ小さかったが、真の恐ろしさは別の所で発揮されるものだったのだ。
それは、ナビとのシンクロを行うことができるオペレーターをターゲットにした特殊なウィルスだった。
それに気づかず、そしてナビに影響がないということもあってロックマンを仲介してウィルスは熱斗にまんまと感染し…。
気づいた時には…もう。
以来、ロックマンはこの状態だった。
オペレーターを何らかの理由で失ったナビは、大抵は回収されて調整の後に別の誰かのものになるのだが、ただでさえ特殊なナビであるロックマンを熱斗以外の誰かの手に渡らせるわけにはいかないので、こうして科学省にある祐一郎の研究室のサーバーにおいているのだが…。
熱斗が危篤となり、そして死に至った時、実の息子をネットセイバーという立場にさせてしまうきっかけを作ったといっても過言ではなかった祐一郎は発狂してしまうかというほど取り乱し、現場復帰に至ったのも奇跡としかいいようがなかったほどだった。だからロックマンが今だ塞ぎ込んで動こうとしない気持ちは痛いほど分かる。
…ロックマン……、幼くして亡くなった熱斗の双子の兄彩斗の生まれ変わりも同然の特別なナビ。
世界初の心を持つナビにとって、血を分けた兄弟以上に強い絆を築いた相手を失った衝撃は、大きいなどというものではない。
祐一郎は、時計を見て次の仕事に移るべく踵を返そうとして、また一度ロックマンがいる画面を見た。
このとき、祐一郎がロックマンの異変に気づくことができたなら、その後に起る悲劇を回避して彼に新たな光を見出させることができたかもしれない。
しかし運命は、最悪の道を優先させた。
祐一郎が研究室から出て行ったあと、ほどなくして画面の中のロックマンがゆらりと立ち上がった。
『ねっとくんは…、どうしていないの…』
見えない誰かに問いかける声も口調も、正常なものではない。
ネットハ、シンダ…
ロックマンの内側から問いの答えが反響する。
『なんで、しんだ…?』
コロサレタ…
『…だれに?』
ウィルスニ、カンセンシタ…ニンゲンヲコロスウィルスに…
『どうしてうぃるすが…?』
ダレカガ
『だれが…』
ドコカニイル、ダレカ
『せかいの…どこかにいるだれか…』
ダレカガ、コロシタ
『…つまり』
目を伏せたロックマンが、もう一度目を開けた時、その目は緑から、血のように赤い色に変貌していた。
熱斗を殺したのは、この世界なんだね?
次の瞬間、科学省のあらゆるシステムに、大量の赤いエラーの文字が表示された。
その時には、祐一郎の研究室の画面からロックマンの姿が消えていた。
***
現在のネット社会の技術の粋を集める科学省は、かつてない混乱に陥った。
表示された赤いエラーの文字。誤作動する全ての機器。制御を拒む操作盤。
緊急時に使うマニュアル式の操作で、メインシステムに辿り着いた祐一郎は原因を突き止めようとした。
するとまるで祐一郎が来るのを見計らったかのように、メインシステムの画面からエラーが消えて、代わりに別の文字が浮かびあがった。
『ねっとくんをころした−−−をころして かたき を とる』
祐一郎がその文を終りまで見るのとほぼ同時に、血が垂れるように赤い色が画面を侵食して染め上げた。
その画面だけじゃなく、この部屋にあった全ての画面が同じように赤く染まると、一瞬フラッシュして元の画面に戻った。
さきほどのことで一瞬我を忘れていた祐一郎は、我に返ってシステムにログインしようと手を伸ばしたが、すぐにその手は止まった。
「ーーーっ! ロックマ…、さ…いと!!!!」
その場に膝と手ををつき嗚咽を漏らし始めた祐一郎の目の前にあるシステムの画面には、破壊された科学省のシステムのプログラムの残骸と、その中にちらつく霞がかった生前の熱斗とロックマンの様々な場面でのやり取りの映像…特に熱斗の笑顔を強調するように映っていた。
赤く染まる画面に出ていた文章の意味と、今起こっている事件の原因に、祐一郎は叫び声に等しい声をあげて泣き続けるしかできなかった。
科学省のシステムを破壊しつくしたロックマンは、すでに科学省からいなくなっていた。
熱斗の仇…、世界の全てを破壊するために…。
***
「くそっ!」
炎山が悪態をついた。
科学省に状況を聞こうとしたがどの回線も破壊されつくしていてできなかった。
眼前には、まるで空襲か、あるいは巨人か何かが暴れて破壊されたような街並みが広がっていた。
その異常さはこれまでに関わってきた事件を思い起こさせるが、規模やそこから感じ取られる悪意の大きさはこれまでの事件とは比べ物にならないほど巨大だ。
被害は、炎山が確認している限り、秋原町以外の科学省周辺の都市全てを中心に、世界中にも及んでいるはずだ。何故か秋原町にだけは被害がなく、理由は不明である。
乗り物も使えない状況でどうにか被害を受けた町に辿り着いた炎山は、自分のナビであるブルースに原因を調べさせるためにプラグインしようとしたのだが…。
『炎山様、エリアが破壊されていて進むことができません!』
そう、現実だけじゃなく電脳世界も破壊されつくしていて、調べるどころかナビが歩くことさえできないのだ。
そんな真っただ中ではあったが、かろうじてまだ息のあったプログラムから、破壊者の情報の一部を聞くことができた。
青いナビ
そのプログラムは、それだけを呟いて消えた。
「炎山君!」
そこにやってきたのは、メイルだった。
なぜここにと問うと、さらにデカオややいとといった顔ぶれが揃った。
彼らは揃って、今回の一件の解決に協力したいらしい。
炎山にとっては、熱斗が亡くなって以来、命日と墓参りの時に偶然出会うぐらいしか顔を合わせる機会がなかったが、今は猫の手を借りたいぐらいだったので、少し嫌みたらしい言い回しで彼らの申し出を受けた。
電脳世界までもを破壊しつくす敵に、まだ破壊されていない回線を見つけるだけで一苦労したが、奇跡的にライカ達と連絡をとることに成功して、被害を受けていないサーバーから敵の情報収集をした。
ライカ達は、混乱する世界中のネットワークの原因がニホンにあるという報告を受けて原因となる敵を倒すためにやってきていたのだ。
ライカ達がそれらのことをしている間、炎山は改めて久しぶりに会ったメイル達を見回した。
人間に危害を及ぼすウィルスによって熱斗が亡くなって早2年。あの頃、まだ小学5年生だった自分達は、小学校を卒業し、今は中学生だ。成長期とあって、随分と印象が変わってきたが、それでも面影はまだ強く残している。
熱斗と一緒に卒業することができなかったことに、メイル達を始めとした同級生達は涙を隠せなかったと聞いている。
ふと熱斗の名前と同時に浮かんできたのは、熱斗と共にいたナビ、ロックマンのことだった。
熱斗が亡くなったことで、オペレーターを失ったロックマンは、熱斗の父親でロックマンの製作者である光祐一郎博士が預かることになり、それ以来顔を見ていない。
ちらりと聞いた話によると、あの日から2年間ずっと塞ぎ込んでいて一切口を開かず、動こうともしていないという。
「(青いナビ…、まさか?)」
メイル達と再会する前に得た死にかけのプログラムから得た、敵の情報。
ロックマンも青を基調としているが…。
そして最初に被害を受けたのは、科学省…。
「炎山君…」
メイルが言った。
「私…すごく嫌な予感がするの。今起こってること…、もしかしたら…」
「言うな」
「もしかしたら…」
「言うな!」
「炎山君も、感じてるんでしょ!」
思わず口調を荒げてしまった炎山以上に、メイルが声をあげた。
見ればメイルの目には涙が浮かんでいた。
「分かるんでしょ? だって…今まで熱斗と一緒に闘ってきたんだから…」
「っ…、おまえはそうなってほしいのか?」
「!」
「…嫌な予感が的中しないほうがいいに決まっている、だろう」
炎山は絞り出すようにそう言って顔をそらし、唇を噛んだ。
メイルが涙を拭う気配がしたころ、敵の現在位置を特定できたという知らせを受けた。
敵は現在、とある都市のメインサーバーに移動したらしく、通った後には何も残さないつもりか、横切っていたエリアを含め現実世界も回線を横切っていく際に同時に破壊していた。
爆発した電柱、道路をめくり上げて千切れた回路をむき出しにした地下の電線、通りがかりにあった建物や乗り物に至るまで、まさに竜巻か何かが通り過ぎたがごとくである。
どうにか辿り着いた街は、まだそこまで大きな破壊行為を受けていいないらしいが、それでも様々な電気機器の誤作動と言った被害を十分受けている。
ライカの仲間がプラグインした直後、何やら異常が起こり、途端彼らのPETと、PETを繋げていた接続端子が爆発した。
すると、テレビモニターをつけている全てのビルに異変が起こった。画面にノイズが走り、騒然とする人々の前に映し出されたその姿は…。
「ロックマン!!」
誰が叫んだかはこの際どうでもいい。
スクリーン映ったのは、炎山達にとって見間違えるわけがない、青いナビ、ロックマンだった。
ロックマンは、ゆっくりとスクリーンの中から周囲を見回す。その動きは緩慢で、誰が見ても正常な状態じゃなかった。
一折見回すと、うつむき、目を伏せた。
そしてゆっくりと顔をあげ、ゆっくりと開かれた目は…、まるで血の色のように鮮やかな赤だった。
ダークロックマンに変貌した時のそれとは違う、それ以上の狂気を秘めた目で、ロックマンはその狂気をそのままに口元を半月に吊り上げる。
その顔に、炎山達が知っているロックマンの面影はなかった。
考えたくはなかった。だが現実は否応なしに、彼らに突き付ける。
破壊の限りをつくしている敵の正体が、ロックマンだということを。
ねっとくんのかたきは ぼくが とる
ロックマンが口を開き、街中の拡声器や電子機器から宣言する。
ねっとくんをころした せかいを ころしてやる
「ロックマン…!!」
メイルが口を押えて涙を流した。
『ダメだよ、ロック!! そんなことしたって、熱斗君は帰ってこないんだよ!!』
メイルのPETの中でロールが叫ぶ。恐らくメイルと同じく泣いているのだろうが、だが今のロックマンに声が届くわけがない。
『熱斗君は…、皆を…世界を救うためにがんばったよ…。だけどみんな、熱斗君に何かしてくれた?』
一変してロックマンの声が悲しげなものに変わった。表情も、炎山達が知っているロックマンの面影を取り戻していた。だが赤い目はそのままだ。
『熱斗君は、皆のためにがんばったよ…。なのになんで…? なんで熱斗君が死ななきゃいけなかったの?』
微かに震えるロックマンの目から、白い頬を伝うそれは…涙ではなく…、真っ赤な…血の涙だった。
『ゆる、さない…』
声が表情が、最初の狂気を帯びたものに変化していく。
同時に血が垂れるようにして、赤色がロックマンが映っている画面を侵食していく。
熱斗君に苦労させて平和になった世界で、のうのうと生きてる何もかもが、僕は憎い!!!!!!!!
ロックマンの絶叫と同時に、テレビモニターが爆発した。
それを合図に街中でロックマンによる破壊活動が開始された。
『熱斗くんは、もっと痛かったよ!! 苦しかったはずだよ!!!!! あはははははははは!!!! みんな壊れろ、死ね、死ね死ねぇぇぇぇ!!!!!!! ははははは、あーはははははははははははははは!!!!!!』
電子機器を通じて狂ったロックマンの声が街中に響き渡る。
……どうすることもできなかった。それだけしか言えない。
プラグインしようとすると、ロックマンの凄まじいエネルギーが逆流してきて、ナビが瞬殺されたあげく、接続部分と、PETが同時に破壊されてしまう。
ロックマンは一通り破壊し終えると、別の場所に移動した。
破壊力もスピードも、時間を過ぎるごとに増しているらしい。
ニホンのみならず、まだネット上での混乱程度で済んでいる世界各国に魔の手が伸びるのも時間の問題だ。
移動速度が増している今、ロックマンがいる場所でプラグインできないのでは倒すすべがないのと同じだ。
なんとかロックマンの力を抑えることができ、その間にプラグインできれば勝機があるかもしれないが…。
どうやって?
八方塞がりの状況で、新たな情報が舞い込んできた。
ロックマンがあるエリアで立ち止まっているらしく、しかもエネルギーの量が減っているらしい。
今ならプラグインしてロックマンに近づける。チャンスは今しかないと踏んで、かつて仲間であったロックマンを倒す決意を固めた炎山達はナビを送った。
かろうじて残っていたエリアを抜けて、そこで目にしたのは…。
『フォルテ!?』
ロックマンと対峙していたのは、これまでに何度も闘ってきた完全自律型の黒いナビ、フォルテだった。
単純に強い相手と戦うのが目的か、幾度も自分を倒してきたライバルであるロックマンの豹変を聞きつけてきたのか、あるいは自分の住処である電脳世界を破壊されるのを防ぎに来たのか。何も語らないフォルテは、狂ったロックマンと睨みあっているだけだ。
お互い傷ついているところからすると、すでに戦いの幕が切って落とされているようだ。
ロックマンが歯を食いしばって、ロックバスターを乱射した。
フォルテは掛け声とともに、それを回避しロックマンの体を吹き飛ばす。
ロックマンは、傷をもろともせずフォルテを掴むと、ソードに変化させた腕でフォルテの顔を狙った。
フォルテはそれを間一髪で避け、頬を裂かれながらもロックマンの頭部に拳を振るおうとしたが、ロックマンはすぐさまフォルテから距離を取って、獣のように四つん這いになった。その表情には理性のかけらもない。
ひび割れていくエリア。フォルテも息があがっているのを見るに、いくら抑えられているとはいえロックマンが放つエネルギーは健在らしくて、それを近距離から浴びているだけでもダメージを負わされているのだ。
しかしフォルテはこれまでの戦いで見せた圧倒的な力を発揮していない。恐らくそのエネルギーの大半をロックマンの力を抑える為に回してしまっているのだろう。
長期戦はだめだ。早々に勝負をつけなければ、崩壊しつつあるエリアごと、または力を取り戻したロックマンにやられてしまう。
膝をついているフォルテに、ブルース達が助太刀に入りフォルテが睨んで無言の悪態をついていたが、状況は理解しているのかロールの回復を甘んじて受けて立ち上がった。
ロックマンは数が増えたからといって臆した様子もなく、歪んだ笑みを浮かべると片腕をキャノンに変えて攻撃を再開した。
フォルテによってエネルギーがある程度抑えられたとはいえ、それは長くもたないようで先ほど以上に攻撃力が増していた。フォルテとて力に限界があるのだから当たり前だ。
それでもブルース達は立ち向かう。近寄っただけでダメージを食っても、少しずつだが確実に攻撃を当てた。
ロックマンは、電脳世界と現実世界を破壊する力の代わりに単身での戦いに必要なスピードと防御力が低下しているようで、動きと、攻撃を受けた時のダメージの大きさを見れば一目瞭然だ。攻撃は最大の防御ということなのだろう。
時間を置くごとにロックマンが放出するエネルギーが勢いを取り戻し始めており、ブルース達は立っていられなくなってきていた。今の時点で息を上げながらも挑めるのはフォルテぐらいだ。
現実世界でもロックマンの影響で周囲の電子機器が火花を散らし、オペレーター達のPETが逆流してくるエネルギーで悲鳴を上げ始めていた。
にやりと笑ったロックマンが気合いをこめてエネルギーの放出量を上げようとした直後、ロックマンの背後から斧が飛んできてロックマンの片腕を切断した。
トマホークマンと、カーネルだった。それに世界最大最強のネット部隊アメロッパ軍。
ここまでに来るまでにロックマンのエネルギーに阻まれて大半がやられただろうに、それでもまだ相当な数を残している。だがトマホークマンやカーネル含め、すでに表面がボロボロだ。元凶であるロックマンを眼前にしたから余計につらいだろうに。
ブルース達との戦いでダメージを蓄積したロックマンだが、全く傷を気にすることなく向かい来るアメロッパ軍を狂気に染まった笑みを浮かべたまま、ひび割れていたエリアごとデリートした。舞散るプログラムの残骸からなる砂塵からカーネルがロックマンに切りかかりそれを受け止めたロックマンの頭上からトマホークマンが斧を振り落とそうとした。
しかし当たる直前で、ロックマンが放出するエネルギーに阻まれ斧の刃が消滅し、ロックマンは絶叫とともにカーネルとトマホークマンを遠くに弾き飛ばした。その際に放出されたエネルギーで二人ともかなりのダメージを受け、あと一歩でデリートされそうだ。
崩壊が進んだエリアのパネルが奈落に落ちそうになった時、間一髪でガッツマンが二人を掴みあげて難を逃れた。
ロックマンにかかっていた抑えが消える寸前となって、もう限界だと感じたオペレーター達が自分のナビをプラグアウトさせようと指示を飛ばそうとした。
だがその時、ロックマンのエネルギーが揺らいだ。
ねっとくん どこ に いる の ねっと くん ねっと おきて ぼくを おいていかないで
うわ言のように呟きながら、血の涙を流すロックマンがエリアを崩壊させていく。そこにフォルテが掴みかかり、無防備だったロックマンが引き倒された。
上から拳を振り下ろすフォルテを、ロックマンは虚ろな目をしてかろうじて残っていた腕をキャノンに変えてフォルテの腹に打ち込みフォルテをどかした。
ねっと どこに いるの こたえ て
「熱斗は…、もういない」
ゆらりと立ち上がったロックマンの体を、最後の力を振り絞ったブルースのブレード攻撃が切り裂いた。すでに自我を失ってしまったロックマンにそう言ったブルースの表情を誰も知らない。
さらにとどめといわんばかりに、フォルテのバスターが火をふいた。
破壊されて離れていくエリアのパネル。それに乗って消滅していくロックマンの体。
消えていくロックマンは何かを掴もうと残っていた手を天にのばした。
僕はデリートされても、熱斗君のいる天国にいけるはずがないのに…。
残っていた心の片隅で、ロックマンは自虐的にそう呟く。
そのとき…。
ふわりとロックマンの手を暖かいものが包むように握った。
驚いてうっすらと目を開けたロックマンの目に映ったのは…。
「熱斗…?」
消えかけているロックマンの手を握っているのは、酷く霞んでいてはっきりと見えないが、熱斗だった。
消える寸前の自分が願望で呼び出してしまったデータの残骸かと自虐的になるロックマンを呼び戻すように、熱斗の声が、確かにロックマンの名前を呼んだ。
その声を聞いてロックマンは大きく目を見開き、首を持ち上げて熱斗を見た。変わらず霞んでいるけど、熱斗は確かに微笑んでいた。
ロックマンの目から血の涙ではなく、透明な涙が零れ落ち、もとの緑色の瞳の輝きを取り戻した。
「どうして気付かなかったのかな…。熱斗君はずっと僕の傍にいてくれていたのに…。酷いこと一杯しちゃった」
バカだよね、僕…。そうぼやくロックマンの手を握る熱斗の手に力がこもる。
ロックマンの目に霞んで映る熱斗の口が言葉を紡いだ。
行こう、と。
「うん…。熱斗君となら行けるよね。どこまでも…」
ロックマンは嬉しそうに笑って、目を閉じた。
二人を暖かな白い光が包み込み、ネット世界の空に昇って消えた。
「−−−−熱斗……、熱斗ーーーーーーーーーー!!!!」
PETから状況を見ていたメイルがその場に泣き崩れた。
あとがき
……初めて書いたエグゼSSがこれって…、私やばいですかね?