60000ヒット記念企画で、紅様のリクエスト『ダンテと人修がルーク専属の護衛&教育係設定で、ダンテ・人修羅VS同行者なお話』





(※キムラスカは捏造して常識的ですが、ナタリアは原作沿いで)
(※人修羅が悪人。てゆーか、悪魔)














『賢い君なら解るだろう。息をするのも自由なのだと。』 後編 (お題提供:














 ルークは無事に連れて戻り、数日後マルクトがダアトを仲介とした和平を結びたいという書状が届いた。

「両国が和平を結ぼうというこの大事な時に、私が出ていかなくてどうするのです! それにずっと屋敷にこもりっきりだったルークでは頼りありませんわ。私が手本をお見せしますわよ、ルーク」

 ええー?

 人修羅とダンテの心が、奇跡的に一致した瞬間だった。
 和平にあたって、アグゼリュスへの親善大使の話が出て、預言によってルークが行くことになった。
 政治のセの字にも関わったことがないルークの補佐として、人修羅とダンテが参加することになり、新しく送られてきたマルクトからの和平の使者フリングスとその部下達、キムラスカの部隊も加えられた。
 ダアトからの人員に、あの襲撃者ティアが入っていたが、これはモースがゴリ押しも同然な形で、彼女の罪を清算するということでギリギリのラインで同行の許可が下りたが、当人にその自覚はなさそうなので、人修羅は頭を抱えたが、それ以上に頭を抱える事態になった。

 王から同行することをとめられていたナタリア王女が、勝手について来ていたのである。

 ナタリアの出現に、ルークは、オロオロとして、頭を抱えて頭痛に耐えている人修羅に助けを求める。
 人修羅は、そんなルークに気づいて顔をあげると、安心させるように笑って背中をポンポンと叩いて落ち着かせようとした。
「お姫様。あんた王様に行くなって言われてなかったけか?」
 ダンテが頭をかきながら言った。
「お父様なら分かってくださいますわ!」
「あ〜、だから…なんつ〜か、そのな。お姫様、自分が言ってること分かってるよな?」
「ダンテ! 私を誰だと思っているのです!」
「…お姫様だろ。キムラスカの…。勝手に抜け出していいのかよ?」
「私は崇高な使命のために国を空けるのですわ」
「そういう問題じゃないですナタリア王女! どのような理由を言われてもあなたが勝手に国を出奔されたという事実には変わりないんですよ!! 今すぐお帰りください!!」
 人修羅がもう我慢ならなくなって叫んだ。
 人修羅のあげた声の大きさに、その場にいた全員の耳がキーンとなった。
 そこはタフなナタリア。すぐに立ち直ると、キッと人修羅を睨み。
「いい加減にしてくださいまし! あなた方お二人がいかにこの国の存亡に関わる存在であろうと許しません事よ!! 私が王女であることが問題であるのなら、王女として扱わないでくださいまし! それならよろしいのでしょう!?」

 禁句言っちゃったー…

 人修羅はガクーンと、脱力して頭を抱えてしまった。
「しっかりしろ、少年!」
「さあ、出発しますわよ!」
「おいおい、お姫様が仕切っ…っ、姫様扱いすんなって言ったこと後悔するんじゃねぇぞ」
 人修羅を支えつつ、ダンテは自分の立場を理解せず意気揚々としているナタリアに対して舌打ちをした。
「ダンテ…」
「ルーク大丈夫だ。何とかなる」
「…この国のためじゃない……」
 人修羅が何かブツブツと、自分達はキムラスカのためじゃない、そんな小さな事のために来たんじゃないとつぶやいていた。
「とはいえ…、今キムラスカに消えられると困る…」
「少年。こんなところで力尽きんじゃねーぞー。まだまだこれからだってのに」

 ダンテなりに人修羅を励ましていたが、この後さらに人修羅の頭痛の種が舞い込んできた。




***




 導師護衛役であるアニスが、アグゼリュスまでの道中の護衛としてついてくる兵の何人かにとめられ、通してくださいよ〜っという声が聞こえてきた。
「なんだぁ?」
「あれ、あいつ確かイオンの近くにいたアニスって奴じゃ…。イオンと一緒にダアトに戻るはずだったんじゃ…」
「…気乗りしないんだけど。話だけは聞いた方がいいかもしれない」
 人修羅がルークに指示を仰いで、ルークが兵達に指示すると、通されたアニスがこちらに駆け寄ってきた。
「イオンはどうしたんだ?」
「それが、ちょっと目を離した隙にイオン様がいなくなってて、大変なんですよぉ!!」

 はいぃぃ!?

 人修羅とダンテとルークの心の声が一致した瞬間だった。
「目ぇ離したって、おま…」
「それで街の人に聞いたら、サーカス団みたいな人達がイオン様を連れていくところを見たって言ってたんですよぉ!!」
「待て待て待て待て待て待て…」
 人修羅が片手を額に押し当てて、アニスがどういう経緯でこうなったのかを思い描いた。
 つまりイオンはダアトに帰らず、おそらくバチカルの市街をアニスと共に見て回り、アニスが目を離した隙に何者かに連れていかれてしまったということだ。
「早く探しにいかないと大変なことになっちゃう!!」
「あーーーーーーー…、おまえと、ダアトがな…」
「えっ?」
「何を呑気なことを言っているの!? イオン様の身に何かあれば和平どころじゃすまないのよ!!!!」
「どうする、少年?」
 ティアの言葉を軽く無視して、ダンテが人修羅に話を振ると、人修羅はこめかみの辺りをマッサージし、顔をあげて、きっぱりと言った。

「ダアトは、もう諦めよう」

 その声と言葉は、あまりにも非情な響きを持っていた。
「何を言っているのです!? 事の重大性を分かっているのですか、あなた達は!!」
「いいのか? 少年?」
「仕方ないよ」
「けどさ…。ダアトって必要だったんじゃ…っ」
 ルークが何か言いかけたのを、人修羅がやんわりと止めて、人修羅は小さく微笑んだ。
「まだその時じゃないし、それにひとつ欠けてもいいよ。こんな状態じゃ、あってもなくても同じだから」
「そうなのか?」
「いい加減にして!!!!」
 ティアの絶叫がこだました。
「さっきから何をわけのわからないこと言って…、今はイオン様の無事を確かめる方が先だわ!!」
「そうですよー! ついででもいいから探してくださいよぉ!!」
「皆の者、非常事態ですわ。すぐに導師イオンの捜索に乗り出しますわよ!!」
 なんか勝手に話が彼女達の間で進んでいるが、ルーク達やフリングス含めたマルクト・キムラスカから派遣された兵達は一様に侮蔑の目を彼女達に向けた。
 人修羅は、長く息を吐くと、ルークの肩を引きよせて耳元で囁いた。


 早く行こう、そして早くアグゼリュスを落としにいかないと、と。


 ルークが、どうしてアグゼリュスを落とさないといけないのかと問うときたら。
 もしその時ルークが、人修羅の目が金色に変化したことや、隠された真意に少しでも気づけていたなら、すぐにでも彼から逃げていただろう…。
 人修羅は、妖艶な笑みを浮かべて、首を傾げるルークを抱き寄せると、その頭を優しく撫で、また何事かをその耳元で囁く。
 ダンテは、呆れた様子でそれを見ていた。







 その数日後、毒に侵された鉱山の街アグゼリュスが魔界に崩落し、そこにいた数千人もの人々が死んだと世界に報じられた。
 アグゼリュスの崩落に、親善大使として派遣されていたルーク・フォン・ファブレ、及びマルクトからの和平の大使らがが巻き込まれたが、マルクトの大使らは奇跡的に難を逃れた。しかしルーク・フォン・ファブレと、七年前にキムラスカに出現した古の文献や遺跡にのみその存在が記されている人修羅と半人半魔の狩人が行方不明になった。
 ほどなく、外郭大地の下に隠されていた魔界にあるユリアシティにて、それまで謎だった人修羅と半人半魔の狩人に関する詳細が明らかになり、人間達は騒然とするのだった。




 彼らは決して救世主なのではなかったのだということを…。
 しかし世界はゆっくりと、確実に終焉へと、向かっていた……。












あとがき

 あはははははは…、もうカラ笑いをあげるきゃない…。
 このリクを見たときから、どうがんばっても混沌王な人修羅しか思い浮かばなくて…。
 あれ、おかしいな…、こんな破滅的な話になっちゃったんだろう…。

 ちなみに、六神将とかヴァンは、前編あたりでダンテに再起不能にさせられたってことで。

 続編を別途に書こうとか、どうしようか悩むところです。



 紅様、このような出来になりましたが、紅様だけ前編・後編どちらもお持ち帰りください。お気に召さなければ書き直しも検討します。








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