60000ヒット記念企画で、紅様のリクエスト『ダンテと人修がルーク専属の護衛&教育係設定で、ダンテ・人修羅VS同行者なお話』





(※ケルベロスのような仲魔をルークにつけているということなので、ケルベロスにしました。ケル大活躍)
(※人修羅の名前はなし。少年か人修羅と呼ばれます)
(※ダンテが人修羅の尻にしかれているので注意)
(※捏造キムラスカ)
(※人修羅が何か企んでる悪人くさいので注意)














『賢い君なら解るだろう。息をするのも自由なのだと。』 前編 (お題提供:


















 ちょっと待てや。どういうこっちゃおまえさん!?

「ルーク様が、襲撃犯との間に疑似超振動を起こしてしまい、襲撃犯とともに姿を消してしまいました!!」
 メイドが泣きながら、屋敷に帰ってきた俺にそれを告げた。

 俺が留守にしている間に、真昼間に堂々と、王家に連なる侯爵家に襲撃した女と、次期キムラスカ王としての立場があるルークが第七音素同士が共鳴しあって、その結果疑似超振動を起こして消えた〜〜〜〜!?
 しかもその犯人の女は、ヴァン・グランツ謡将の関係者で、しかも彼女はオラクル騎士団の制服をしっかり纏っていたという。

 んなアホな誘拐事件があるかーーーー!!っと、少年は叫びたかった。

「HEY、少年。どえらいことになっちまったらしいな?」
 銀髪と、赤いコートの男…。てゆーか俺の相棒のダンテが来た。
「……あんたも留守にしてたんだっけ?」
「あー…、最悪のタイミングだったつーか」
「…なんかさぁ。色々突っ込みどころありすぎて、逆に混乱するよ」
「真昼間に譜歌を使って堂々と、あの髭面を狙ったらしいな。中々ガッツのある女じゃねーか」
「ガッツがあるないの問題じゃないよ。ファブレ家は王家の家系なんだよ? なのにその犯人は、黒幕は私ですよ〜って言わんばかりにオラクルの制服着てたらしいんだ。…ガッツがあるんじゃなくて、ただのバカだよ」
「ハハハ、間違いなく第何次世界大戦一直線まっしぐらで、面白くなりそ…、っででででででででででででで!!!!!」
「アホなこと言ってないで、ルークの救出の方を考えようよ」
「っ〜〜、少年…、ルークの教育係になってから性格変わっただろ?」
「……ルークがいなくなると困るんだ。わかってるくせに」
「そいつは失礼」
 悪びれもなく肩をすくめるダンテを睨んで黙らせ、ルークの救援について侯爵とかけあうとともに、ルークの傍につけている仲魔との交信をするべく、意識を集中した。




***




 夜の渓谷を、朱い髪の少年を背中に乗せた白い大きな獣がのしのしと歩いて進んでいく。
 渓谷に分布する魔物は、少年を乗せた白い獣を恐れて近寄らない。勇敢にも挑もうとすれば、獣がうなり声をあげてひと睨みすると怖気付いてあっさりと逃げていくのだった。
 格が違いすぎる。魔物と言えど人間と同じ動物だ。
 朱い髪の少年、ルークを乗せた大きな白い獣、ケルベロスはれっきとした悪魔だ。格が違うとかいうレベルではない。
「ケル。大丈夫なのか?」
『オレヲ誰ダト思ッテイル。七年前カラオマエヲ乗セテヤッテイタンダゾ。ナニヲイマサラ』
「違うって、ちゃんと帰れるのかどうかってこと」
『主ガオレノ居場所ヲ探知シテ迎エニクル。ダガマズハ、ココヲ出テ、合流シナケレバナラナイ』
「ダンテは?」
『アノ男モ主トイッショニ来ルハズダ。心配スルナ』
「…うん」
 ケルベロスの背中に置かれたルークの手に力がこもった。

 ケルベロスの主は、人間じゃない。ついでにダンテもだ。
 二人とも見た目こそ人間だが、かたや悪魔の力を植え付けられた元人間の人修羅。かたや悪魔を父親に持つ半人半魔。
 古い文献や、王家の遺跡にもその存在が記されているのだが、詳細については削れ落ちたりしていて不明なままだった。
 ただ言い伝えによると…。


 
世界に混沌が訪れる時、両者が現世に現れる


 …っとされていて、今から七年前、ルークが一切の記憶を失った状態で屋敷に戻ってきたときに、彼らは現れた。
 もっとも、彼らは伝説上に語れるような神秘的なというか、そういう類いのイメージとは全く異なっていたが…。

 普段は刻印とかいった悪魔の部分を隠していれば、悪魔とダンテに遠慮なく踵落とし等をかますことを抜けば、ルークと同年代ぐらいの腹黒い性格の少年と。
 皮肉屋で、タフさが売りの(単にという噂も…)、毎日いらんトラブルを起こしては人修羅にしばかれている、赤いコートと、銀髪、そして大剣と二丁の銃が特徴の悪魔狩り。

 こんな奴らが世界の命運に関わる重要な存在だなんて、誰が考えるのか…。

 彼らについての詳細が謎なため、当然扱いに悩む。
 人修羅がルークの傍で仕事をさせてくれと申し出てこなければ、現在の状況にはなっていない。

 理由については一切語らないが、伝説として伝えられる存在の申し出なのでキムラスカはすぐに応えた。
 ダンテも引きずられる形で屋敷で用心棒になっている。ただ勝手に行動することが多いのでほとんど無いものと扱われているが、いざとなると必ず駆けつけてくるので心強いといえば心強い。何だかんだで彼の人柄に心を許す人間も少なくなかったのだ。
 これらのことからするに、人々は彼らを救世主か何かと判断をつけたようだ。

 人修羅は、他の悪魔を従える力をも持ち合わせており、ルークと一緒にいるケルベロスは元々人修羅の仲魔だ。人修羅の命令でルークを護衛している。口は悪いが、しっかりと与えられた役目を全うし、七年もずっと付き合っているせいかルークは友達のように思っている。ケルベロスの方も悪態をつきながらも満更でもなさそうだ。


「うわっ! 魔物!?」
『オイ。ソコノ人間』
「ひぃ!? 喋った!!」
『港ハ、コッチノ方角デアッテイルナ? コタエロ』
「そ、そそそ、そうです…」
「け、ケル。もうちょっと優しくできねーのか?」
『面倒ダ。サッサトイクゾ』
「ケルはせっかちだな〜」
 腰を抜かす辻馬車の騎手を放っておき、ケルベロスはルークを背中に乗せたまま走りだした。




***




 ケセドニアの港
 その辺にあった機材に腰をおろした人修羅の少年は、難しい顔をして頬杖をついていた。
「どうした少年。固い顔して、何かあったか?」
 そこにダンテがやってきた。
「……ケルベロスの声が聞こえない。こっちの声も届かないんだ」
「ここ最近そればっかだな。いつもの調子はどうした少年」
「…安定しないんだよ。…世界が」
 くっく、っと笑っていたダンテの顔から笑みが消えた。
 人修羅は立ち上がると、空を見上げた。
 雲が所々に浮かぶ青空ではあるが、着実にそれは迫っている。
「連絡が取れないなら仕方ない。こっちから行くしかねぇな」
「分かるの?」
「だいたいな」
「さすが。すごい鼻だね」
「俺は犬じゃねぇ!」
「さっさと行くよ」
「少年、最近マジで冷たいぜ?」

「ルークは、“カギ”だから、無くなっちゃうと困るんだよ」

 ちゃかしてくるダンテに、人修羅が軽く睨みながら言った。




***




 タルタロスの牢屋で、ルークは寝台に腰掛けて、うつむき。
 ケルベロスは、足もとの床で伏せて休んでいる。
『…オマエノ責任ジャナイ。気ニスルナ』
「……」
『道ヲ間違エタ、オレノ責任ダ。ナニヨリモ、アノマルクトノ死霊使イト呼バレル男ノ態度ガマルデナッテイナカッタノダ。オマエノ判断ハ、間違イデハナイゾ。オレガオマエナラ、スグニデモアノ男ノ息ノ根ヲ止メテイタ』
 ケルベロスが、落ち込むルークを励まそうとするが、ルークはうつむいたまま、何も答えない。
 そんなルークに、ケルベロスはため息をついて、床の上で丸くなった。
 ケセドニアの港を目指していたつもりが、派手に道を間違えてエンゲーブに辿り着いてしまった。
 ライオンのような大きな白い獣に跨った、朱い髪の少年という組み合わせに、村人が騒がないはずがない。
 おまけに、渓谷に置き去りにしてきた襲撃犯であるティアがエンゲーブいて、勝手に怒鳴り散らされ。呆れて物も言えなくなっていたところを、エンゲーブに来る途中で見かけた陸上戦艦タルタロスに乗っていたジェイドらに捕まってしまったのだ。
 それからタルタロス内で、ジェイドと導師イオンが、和平の取り次ぎをしてくれないかとルークに申し立ててきた。

 それを断った。
 そして、牢屋に一人と一匹は放り込まれた。

 ルークは、確かに王族ではあるが、政治のセの字にも関わってはいない。
 ましてや今回の誘拐事件で放り出されるまで、屋敷から出たことがないのだ。つまり城になど入ったことさえない。
 なのではっきり言ってルークには、そんな権限がないのだ。だから自分では取り次ぎはできないと説明したのだが…。
『…要求ヲノマネバ、束縛トハ、呆レテモノモ言エン』
 ケルベロスは、長い溜息を吐いた。
 けれど、その時、ケルベロスはがばっと顔をあげた。
「…どうしたんだよ?」
 ルークがようやく口を開いた。ケルベロスは、それを気にせず、外に気配に耳を傾けている。
『…ルーク。主ガ、主ガ来タ!』
「ええ?」
 ルークが声を上げる。ケルベロスは、立ち上がって素早く牢屋の扉に来ると、強靭な前足であっさりと破壊した。
『行クゾ! ダンテモイル』
「マジかよ!」
 ルークはケルベロスとともに、牢屋から脱出した。

 直後船体が、激しく揺れ、船内に響き渡った船員の声が、魔物の襲撃と、乗り込んできたオラクル兵と六神将の存在を知らせた。




***




「げっ!」
『主!』
 ケルベロスの誘導で船内を走った。ルークが声をあげたのは人修羅とダンテの姿を見つけたからじゃない。
 ルークとケルベロスが辿り着いた先では、ジェイドとティア、六神将のラルゴとシンク、その二グループの間に人修羅とダンテの二人がいるという状況だった。ルークが声をあげたのは、ティアとジェイドの姿を見たからだ。
 壁に穴があいてて、外の景色が丸見えになっているところからするに、人修羅とダンテが破壊して侵入したものと思われる。
「ルーク!」
「よぉ、ワンころ。ちゃんと子守してくれてたか?」
『エエィ! 貴様ニ言ワレズトモ主カラ任サレタ役目ハコナシテイルゾ!!』
「喧嘩してる場合じゃねっての!!」
「ふん、ちょうどいい」
「うわっ!」
 ラルゴが口元をあげて、大鎌をルークの首に向けて振った。
 ルークは驚いて一瞬目をつむったが、直後金属を弾き飛ばす音がして、見るとケルベロスがラルゴの鎌を弾き飛ばしていた。
「ラルゴ。今は導師を確保するほうが先だよ!」
 そう言ってシンクがその場から出て行った。
「そうはさせませんよ!」
「!」
 人修羅が何かに気づき、ジェイドの腕をその細腕からは想像もできない力で掴んで放り投げるようにしてどかすと、直後ラルゴが何か小さな箱のようなものを投げ、それが開くと中から何らかの力が発生し、ジェイドが立っていた位置にいる人修羅の体に降り注いだ。
 一瞬眉をよせて膝をつく人修羅。だが…。
「おい、少年!」
「っ…、あーもう…』
「なっ!?」
 ラルゴがゆっくりと立ち上がって向きなおった少年の姿に、思わず声をあげた。
 先ほどまでなかった、顔や首、手足等の肌が見えている部分に浮き上がった青緑色の光を放つ奇妙な刺青に、金色に輝く瞳。
 その瞳の奥にゆらめく何かと、その雰囲気には、明らかに次元の違う何かを見る者に与えた。
「その姿…、まさか、貴様は! っっ!!!!!」
 ラルゴの巨体が一瞬にして吹き飛ばされた。
 本来の姿をさらけ出した人修羅が、拳を突き出した状態から体制を戻すと、首をコキコキと動かした。
『全くもう…、アンチフォンスロットなんて物騒なものくらったから隠していられなくなったじゃないか』
「おまえ大して変わらねぇんだしよ。気にする必要ないじゃないか?」
『半分人間のあんたはいいけど。俺はそうはいかないの! っ、おっと!』
 人修羅とダンテが喧嘩をしていると、そこにルークがかけてきて、人修羅に抱きついた。
『ルーク、怪我はない?』
 ルークの頭を撫でてやりながら、人修羅がルークに聞くと、ルークは顔を人修羅の肩にうずめたまま頷いた。
『怪我ハナイ。…ダガ…』
「だが?」
「あなた達、一体何者なの!? それにその姿は…」
『手短に聞きますけど、何故ルークがこの船に乗っているんですか? 事と次第では俺達はあなた達を敵とみなさないといけなくなる』
「な、なんてこと言うの!? こっちの質問に答えないで何様のつもり!?」
「…おい、ワンころ、何があった?」
『悪魔ノオレデサエ、胸糞ガ悪クルナルコトガアッタ』
 その後ケルベロスが、タタル渓谷からこの船の牢屋にぶちこまれるまでの経緯を全て話した。その間に、誤解だとか、こちらの話を理解してもらえなかったからだとか、言い訳が聞こえてきて、人修羅は眉をよせて拳を握り、ダンテでさえ顔をしかめた。
「少年」
『うるさいから、ちょっと黙ってて』
 人修羅は、懐から一枚に書類を出すと、そこに手早く何かを書き。
『ヤタガラス』
 カラスに似た悪魔を呼び出し、その書類を畳んでその足にしばりつけると、この船に進入した際にあけた穴から外へ飛び立たせた。
「あの、今のは?」
『あなた方、マルクトとダアトのルークに対する仕打ちをキムラスカに連絡しただけですよ』
 あたりまえじゃないですか? 人修羅は目を細め、声をあげようとするジェイドとティアを威圧して黙らせた。
『ダンテ。悪いけどイオンをついでに救出してきてくれない? もしよかったらこの船にいる人達もね。俺はルークを連れて帰るからさ』
「かまわねぇが、……いいだろ?」
 にやりと笑ったダンテの言いたいことが分かり、人修羅はため息を吐いたが、やりすぎるなよと釘打ちして許可を出すと、ダンテは満面の笑みを浮かべて疾風の如くその場からいなくなった。
『じゃあ、ルーク。帰ろう。疲れたでしょ?』
「うん…」
「待ちなさい!」
『なんですか?』
「あなたは人のような悪魔、…つまり人修羅ね。どうしてこんなところに…ルークなんかと一緒にいるなんて、どういうこと!?」
『…それはあなた方が知ることじゃないよ』
 人修羅はそれだけ言うと、ルークを横抱きにした状態で光に包まれ、消えた。ケルベロスも消えた。


 そう…、ただの人間が知ることじゃないんだ…


 姿が消えた後、人修羅の声が、響き渡った。









あとがき

 …激しくリク外した!
 専属教育係でもなければ、護衛でもないよこの二人!
 書いているうちに、人修羅が何かを企んでいる悪人になってしまった(ルシ様みたい…)。
 専属という枠で、悪魔という二人の共通要素を詰め込むのは難しかったので、こういう形で納めてしまいました。

 後編に続きます。

 あ、ちなみにガイとミュウとかは出番なし。
 後編では、人修羅とダンテが現世に現れた理由が明かされます。二人とも悪人なので注意。








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