60000ヒット記念企画で、菖蒲様のリクエスト『DDS2ヴリトラ戦後のリアルサーフ&リアルヒートがTOAにトリップしてレプリカルークを育てる、と言う話害&髭には懐かない方向で』









『麗悪しき悪魔姫 前編 (お題提供:DEVIOUSDDDS!












 二人が目覚めたとき、そこは真っ暗な暗闇だった。

 暗闇の中ではっきりと見たのは、もう二度と出会うはずのなかった相手の姿。

 あのとき…、そう自分達がいた世界で、かたや一人の少女を己の野望のために言葉巧みに操ろうとし結局悪魔となって殺された男と、かたや少女を思い男の野望を止めんとしたが鉛玉に倒れ命を落とした男。

 それぞれがそれぞれの因果の導きによって、役目を終えたはずだった。

 だから初めこそ、自分達がおかれた状況が死後の世界だと思ったが、すぐにそれが違うことを知った。

『我が名はローレライ。おまえ達を呼んだのは他でもない…』

「…二回も死んだせいか変な幻聴が聞こえるよヒート」
「二回も死んだのは自分のせいだろうが」

『聞け! 幻聴として片づけるな!!』

「だから何なんだ?」

『え〜、うぉっほん。実は…』

「そういえばあのあと世界はどうなった?」
「セラと、セラが作ったもう一人の俺達が救ってくれたよ。おまえがくたばっている間にな」

聞けーーーー!! あーもう、時間がない!! 聞かなかったおまえ達が悪いのだからな!!!!!』

「は? 何が、って!」
「おい、何をする気だ!!」

 サーフとヒートが抗議の声をあげる暇もなく、真っ暗だったその場所が一瞬にして真っ白な光に包まれた。





***





「…で、今こうなっているわけだけど」
「サ〜フ〜、ヒ〜ト〜」
「どうしたルーク?」
「…まさか再び子供の面倒をみる羽目になるとは」

 再び目が覚めた時、そこは見知らぬ屋敷だった。
 何が起こったのか確認する間もなく、混乱する頭になだれ込んできたのは、この世界…オールドラントでの自分達のありもしない記憶で、自分達はキムラスカのバチカル最上階に位置するファブレ公爵家の一人息子、ルークの教育係として存在するというものだった。
 むろん周囲はその記憶通り、自分達にルークの教育係としての場所を作っている。
 いきなり放り出された見知らぬ世界で、ありもしない記憶を注入された状態で、二人は仕方なくルークの教育係という役目を果たし、この世界で生活するしかなかった。
「確かローレライって言ってたな、あの声…、神じゃなさそうだったな」
「あれから全く音沙汰ないし、俺達に一体何をさせたかったんだか」
「えっとねー。“いとしご”を守ってほしいんだって」
「「はぁ?」」
 二人のぼやきに対して急にルークがそう言ってきたので、驚いて見たら、ルークは首を傾げて「ローレライが言ってた」っと言った。
「……ルーク、そのローレライの声が聞こえるのかい?」
「うん」
 頷くルークを見て、サーフとヒートは互いに顔を見合わせた。
 そしてまたルークに向きなおり。
「じゃあつまり、ルークはローレライとお話ができるのかな?」
「できるー」
「…だ、そうだ」
「そうか…。よし、ルーク。今からローレライにちょっと俺達のお願いを聞いてもらえるよう頼めるか?」
「な〜に〜?」
 再度首を傾げるルークに、二人は一息置いて同時に言った。

「「今すぐここに来い、話がある」」




***




「これは新手の嫌がらせだな。そう思わないかヒート」
「そう言いながらメチャクチャ楽しそうじゃねぇか! またあの時みたいな過ちを犯す気じゃないだろうな!?」
「まっさか、もうあんなことはこりごりだよ」
「…どうだかな」

 あれから二人は、ルークに呼び出されたローレライから、聞けるだけのことを聞いた(絞り出した?)。
 ローレライという、オールドラントの意思ともいえる、第七音素の集合体は、どうやら自分がいかなる手を尽くしても不幸な道しか進めない自分の同位体で、かつ構成成分が第七音素のみという実質己と全く同じ存在であるレプリカルークを救うために、サーフとヒートを呼んだらしい。
 なぜ自分達じゃなきゃいけなかったのかというと、彼らが過去別の世界で運命を大きく左右した発端になった存在だったからなのだという。
 まあ要するに全く違う場所から持ち出した発破材で、オールドラントにおいて神に等しい存在(だと当人が言う)でもどうすることもできない運命を変えてしまおうとしたのだ。
「結局人任せだって言ってるのと同じだな。大を通り越して、巨大な迷惑だよ」
「ルークを守ること以外は好きにしていいって言われた瞬間、目の色かえて承諾した奴が言うな!!!!」
「あれ? いつ僕がそんなことを言ったのかな?」
「サーフ…てめぇ…」
「ヒートはだんだんと、AIのヒートが混じってきてるんじゃない? そこまで口悪くなかっただろ?」
「誰のせいだと思ってやがるんだ!!!!」
「ま、なんにしても、悪魔の力が残っているのは助かるよ。おかげで色々楽にできるし」
「…妙な気を起すなよ?」
「そしたらヒートが止めてくれるんだろ?」
「はっ…!? …おまえ変わったな」
「2回も死んだらさすがに。ヒートだって相当変わったと思うけど?」
「誰のせいだと思ってやがるんだ? 俺を殺したのも、元いた世界を壊したのもおまえの癖に」
「そうだね…。それなのに全く違う世界でその最低な男と、そいつに殺された男が必要とされるなんて、これ以上おかしい喜劇はないよ」
「フン、…全くだ」
「ま、何はともかく、さっさとルークを守りやすい地盤を築いてしまおう。預言、預言って、あんまりにも馬鹿らしくてやってられないからね」
「そうだな。ならとっとと終わらせるぞサーフ」
「じゃあ、行こうかヒート」
 ヒートとサーフの片腕が異形に変じ、その目が獣を思わせる金色に輝いた。


 星の意思そのものたる存在によって、死後の世界より呼び出された悪魔の力を宿せし二人の男達の手により、変わらぬ未来を紡いでいたはずの世界の行く末は捻じ曲げられた。







あとがき

 書いてたら一話で収まりそうになくなってきたので、前編後編に分けてやってみようと思います。
 前編は、リアルサーフとリアルヒートがどういった経緯で、TOAにやってきてしまったのかということと、これからやってやるぜという流れを出してみました。うまく表現できたか不安ではあります…。
 二人は、一回死んで、リアルサーフに至ってはリアルヒート+AIサーフにもう一回倒されたから、かーなり性格が変わってしまったということで。
 私が勝手に思っていることですが、たぶんリアルのこの二人はセラの一件以前は普通に仲良かったんじゃないかなと思う。
 ここでの二人は、お互い殺した殺されたで以前とは違う奇妙な絆が生まれちゃったみたいな…。
 別に二人は元いた世界での罪を清算するためにローレライの頼みを聞いたわけじゃないです。
 無理やり放り出されたし、それ以外やれることもないから仕方なく…、まあやってみたら案外楽しいから続けて見ているという感じです。

 そして後編に続きますが、後編ではいきなり本編にいって、無理やりに最後にこぎづけます。
 ちなみに、彼らは年取らない路線でお願いします(永遠の20代(推測))。でも寿命はあるってことで。







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