60000ヒット記念企画で、菖蒲様のリクエスト『DDS2ヴリトラ戦後のリアルサーフ&リアルヒートがTOAにトリップしてレプリカルークを育てる、と言う話害&髭には懐かない方向で』後編


(※時間軸は前編よりかなり飛んで、本編へ。でもかなり捏造入っていて、色々イベントをすっ飛ばします)
(※ルークの性格は黒だけど、まだ良心的なのを目指してみました)
(※害&髭(+ティア)は、もはや空気扱いにて注意)
(※ちょこっと血の表現あり)











『麗悪しき悪魔姫』 後編 (お題提供:DEVIOUSDDDS!
















 俺の傍には屋敷に戻ったころからずっと傍に、二人の教育係がいた。
 名前は、サーフとヒート。
 何かすっげー正反対な性格で、よく夫婦漫才みたいなことやってる。
 それだけじゃない。この二人には普通の人間には…いや、この世界のどこを探したってこの二人にしかない力があった。




***




 サーフとヒートが、この世界に、ファブレ家の屋敷に来てから早七年。
 表向きの空気は、とってものほほんとしている。そう、あくまで表向きは。

「最近やっとあの小物王様も大人しくなってくれたようだね」
「あれで大人しくならない方が無理だと思うがな…」
「酷いなヒート。そんな人のことを悪魔を見るみたいな目でみないでくれよ」
「悪魔だろうが!!」
「ヒートも悪魔じゃん」
「っ…」
 サーフに言い負かされ口を噤んだヒートが、どかりと椅子に座った。
 そんなヒートを見て、クスクスと笑いながらサーフは自分のカップに注がれている紅茶を口にした。
 二人がそんなやり取りをしているのを、ルークはテーブルの端に頬杖をついて、見ていた。
 この光景は日常の風景だ。
 物心ついた時から、ずっとこの二人が傍にいたことを、ルークは記憶している。
 時折聞こえてくるローレライの声と、サーフとヒート。ルークの世界を形成する要素はこれだけだったといっても過言ではない。
 以前のルークとの違いに、哀れだと嘆くばかりのシュザンヌ、自分を見ようとしないファブレ公爵家の当主クリムゾン、ファブレ家に滅ぼされた一族の無念を晴らそうと常日頃様子を伺っているガイ(ガイラルディア)、表向きこそ剣の師範として優しく接して来るがその実汚らわしい物を見る時の蔑みを向けてくるヴァン、ただただ昔の約束を思い出せと迫ってくるナタリア。。
 ルークが自分が本物のルーク・フォン・ファブレのレプリカだと知らされたのは、4年前。
 その事実を知ったルークは、なんだそんなことかと、これといった驚きも、絶望といったものもなく受け止めた。
 自身が“ルーク”ではないということは、サーフやヒートから教えられてきた知識や、屋敷に残された本物のルークの軌跡を見て十分すぎるほど理解していたのだ。
「“ルーク”はいつになったら帰ってくるんだろーなー…」
「帰ってくる気ないだろうな。もうかれこれ七年も経つし…」
「別に“ルーク”が帰ってこなくたって、ルークがキムラスカを継げばいいじゃないか」
「やだ。俺ガラじゃねーもん」
「何言ってるのさルーク。僕とヒートが手塩をかけて、手取り足取り、あんなことやこんなことも含めて、みっっっっっっっっちり英才教育してきた君が、あの小物王様より下であるはずがな…、っ! 痛いじゃないかヒート」
「てめ…今すぐ死ね!」
「もう死ぬのはいやだよ。まあ、ヒートの手にかかって死ねるなら本望だよv」
「気色悪い言い方をするなー!!!!!!!」
「……はぁ。そういえば、あの髭が来てたっけな」
 再び始まった二人のやりとりを眺めながら、ルークは稽古の日でもないのに今屋敷に来ているヴァンが、恐らくこの後スケジュールの変更で先の稽古日を今日に回してくることを予想し、憂鬱になった。


 けれど。


「裏切り者、ヴァン覚悟!!!!!」

 …いきなり真昼間に襲撃してきた暗殺者のことまでは、予想できなかった。いや、さすがにこのような展開は、人間の予測能力で予想するのは無理だ。
 それぐらいありえなかったのだ。ティアというローレライ教団の衣装を纏った女の真昼間の襲撃が。




***




「あのインチキくさい人魂(ローレライのこと)が言ってた展開になってきたね」
「いや、俺達がいるから違うだろ」
「飛ばされるのを防げなかったから、点数で言ったら70点くらいじゃない? 人魂が五月蠅いから下見はしたけど、うん、間違いなくここはタタル渓谷だ」
「げー…、バチカルまで結構距離あるじゃん」
「まっすぐケセドニアに行けばあとは船に乗ればすぐに戻れる。それまでのがまんだぞルーク」
「ふぁーい」
「ちょっとあなた達、さっきから何をゴチャゴチャ言っているの!? 状況分かってる!?」
 ティアのあげる声に、三人は一気に力が抜けるのを感じた。
 そんなことは分かり切っている。そもそも元凶はおまえだ。
 ローレライから聞いている展開では、このティアという女はルークとともに渓谷を抜け(ルークを前線に立たせて)、間違ってグランコクマ行きの辻馬車に乗って行ってしまうことになっている。
「…どうする、ヒート?」
「無視だ。無視に限る」
「俺も賛成」
「…、って、どこに行く気なの!?」
 三人は無視を決め込んで、さっさと夜の渓谷を抜けるべく足を進めて行った。
「なー、やっぱ殺した方がいいんじゃね?」
 後ろからヒステリックな声をあげて追いかけてくるティアに、ルークは面倒くさそうに言った。
 無視したいが、どうにも耳障りで仕方がない。それはサーフもヒートも同じことだ。
 だが、サーフは意地悪く口元を緩めた。それを見たヒートは、サーフが考えていることを何と無く察し、眉間に皺を寄せた。
「ついてくればついてきたで、面白くなりそうだから殺さなくていいと思うよ?」
「おい、サーフ…」
「自業自得だろ? それに常識的に考えれば、そうなるべきだし」
「…それはそうだが。“あの時”の繰り返しをやろうとしてるんじゃ…」
「あれはもうこりごりだよ。何回言わせる気さ?」
「…どうも信用いかねぇんだよ」
「まあ…、あれは無理もないね。無理に信用してくれなくたっていいんだ。けど、もうあの世界でやったことはしないよ。それだけは約束できる」
「……」
「で、結論は?」
 ルークが合間を見て口出しし、サーフとヒートは我に返った。
 結局ティアは放置することになった。
 タタル渓谷には少なからず魔物が生息しているのだが、襲ってくる気配はない。

「魔物も悪魔が怖いんだな」

 ルークがそう言ったのに対し、サーフとヒートは苦笑いを浮かべるしかなかった。




***




 ケセドニアに着いて、さっさと領事館を通して船に乗り、バチカルへ帰還した。ついでにこの時にティアも束縛した。
 ここからがルークが辿る運命の大きな分岐点だ。ローレライから聞いている話では、バチカルに帰還してからルークはアグゼリュスへ親善大使として派遣され、そこで髭…もといヴァンの暗示で超振動を使わされてアグゼリュスを落としてしまうことになっている。
 けれどすでに運命は修復不能なほどねじり曲げられていた。
 別の世界にて、その世界に大きく関わった二人の男の手で。
「いい加減にしたらどう? 豚ちゃん。国王様、いくらなんでも頷けませんよね? 預言に詠まれたからってルークを親善大使にするというのは」
「なっ…貴様何のつもりだ! 陛下なにませぬぞ! このような不敬者はさっさと…」
「…そうだな。そなたの言葉通りだ、サーフ」
「!?」
 モースに目もくれることなく、サーフに向かって酷く疲れたような打ちのめされて立ち上がる力すら失せた、そういう口調でインゴベルトが言ったことに驚愕したモースはインゴベルトとサーフを見比べた。
「よかった。これで預言に基づいた戦争で出る犠牲者も、費やされる富も出なくてすんだのですから、この国はきっと安泰です」
 ルークがほっと息をついて、そう言った。
「何を言っておるのだ!! それでは預言が…、陛下! ユリアの預言に逆らって何のためにな…っ!!!!!!?????」
「うるせぇ肉団子だな。いい加減現実を見ろ」
 ヒートが拳銃をモースのこめかみに着き付けた。モースはひくりと喉が震えた。
 モースは助けを求めて周囲を一遍したが、その場にいる誰もが、モースから目をそらしていた。
 そんなモースに、サーフがにっこりと笑って言った。
「預言預言って…、馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返して楽しい? ごらんよ。あなたが預言預言って叫んでいる間に、世界は変わった。預言はもう意味なんかないんだ。分かるよね?」
「黙れ! 預言は絶対なのだ!! キムラスカの勝利のもとに未曾有の繁栄がもたらされるのだぞ、それを…」
「でも、その繁栄は一瞬だけなんだぜ?」
 知ってた? っとルークが首をかしげて聞くと、モースは、えっ?っという顔をしてルークを見た。
「ローレライから直接聞いたんだ。キムラスカは勝つけど、そのあと世界は滅ぶって。これって意味なくねー?」
「馬鹿な! そんなこと誰が信じるというのだ!!!!!」
「やれやれ、預言は信じて、ローレライの完全同位体であるルークが、ローレライから直接聞いた言葉は聞かないってか? ローレライ教団って名前のくせに矛盾してるぞ」
「黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!!!!!!!! 預言を冒涜する貴様らは人間ではない!!!!!!! 化け物どもめ、さっさと失せろ!!!!!!!」

「ああ、そうだよ。僕らは人間じゃない」

 訳の分からない事を喚き出したモースに、サーフがきっぱりと言った。
 大きく目を見開いたモースに、サーフはにっこりと、それはそれは綺麗に笑った。

「僕とヒートは、かつてこの世界ではない、違う世界の人間だった。僕は自らの野望のためにヒートを殺し、神と対話できる少女を裏切り、その報いで修羅になって二度も死んだ。死後の世界から僕とヒートをこの世界へ連れて来たのは、ローレライだった。ローレライの目的は、世界が辿るはずだった未来を変えること。そしてそれはなされた」

 サーフが自分の左頬を撫でると、そこに今までなかったアートマシンボルが現れ、そこから血管のような筋が延びて、見る間にサーフの姿を異形のそれへと変えた。

『ルークを守ること以外は好きにしていいって言ったから、好きにさせてもらってるけど』
 ヴァルナに変じたサーフが、片腕から刃を出した。

「大詠師モース。あんたは預言が人類を救うと信じて努力してきたことは事実だ。だけど…、現実を見なかった。それがあんたの敗因だ。もう預言に意味はない。盲信する必要はない。ユリアが預言を詠む前、預言がない頃は確かにあったんだ。預言がなくたって生きていけるんだ。…恐れる必要なんてない。だから…」

 ルークはすらすらと言葉を紡ぎ、モースに向かってヴァルナが刃を振り下ろす直前で目を伏せた。



「…安らかに眠れ。……なんて、…言えないよな〜」

 ルークは、充満する血臭に眉を寄せながら、面倒くさそうに頭をかいた。






 その後、キムラスカはマルクトと和平を結び、世界は平和になった。




***




「…まあ、何とかローレライの願いどおり未来は変わったわけだけど。これから僕らはどうすればいいんだろうね?」
「知るか。…俺の予想だと、このままのような気がするが…」
「それはそれでいいけど」
「いいのかよ…」
「ヒートはイヤ?」
「…知るか」
「二人ともいてくれるんならさぁ。ちょっと手伝ってくれよ。俺一人でこのグダグダ王国を立て直せっての?」
 ルークが腰に手を当てて、不機嫌に言った。
「ルーク。僕らは君をそんな弱い子に育てた覚えはないよ?」
「この国を感服無きまでに骨抜きにした元凶が何言ってやがんだーーーーー!!!!!!!」
「しょうがないじゃないか。これくらいやらないとうまく事が運ばな…、ってヒート?」
「行くぞ」
「……ハー…。まあ、しばらく退屈しないで済みそうだから、いいか」




 捩り曲げられた因果。
 その世界で、その世界の意志ともいえる存在に招かれた悪魔の力を持つ二人の男は、良くも悪くも末永く伝説として語り継がれることになる。









あとがき

 結局、リクから激しく外れたー……。
 ガイ、ヴァンとか完全空気…。ティアもちょい出。それ以外は名前さえない。
 ガイとヴァンには懐かない方向でということなので、私なりに彼らが懐かれて無いというのを表現しようとがんばった結果、こうなりました。名前しか出てない。

 前編と後編と合わせて読みかえしてみて、ある意味リアルサーフとリアルヒートの救済っぽいかな?っと思った。
 DDS世界であんなことになった二人が、余所の世界で新しい人生を送る。幸せかどうかは微妙ですが、私的には幸せな新しい生活だと思っています。

 文中、リアルサーフがインゴベルトを“小物王様”とか、モースを“豚ちゃん”とか言ってますが、二回死んでだいぶ丸くなっても変わってないところも結構あるってことを出したくてそうしました。

 うーん…リクの、ヴリトラ戦後ってことが分かりづらいし、ルークを育ててるってことも伝わりにくくなっている感が否めない…。うう…。

 菖蒲様、このような出来になりました。菖蒲様だけ両方をお持ち帰りください。







 

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