【こんにちは、初めましてv】 雪の精が純朴青年(?)を連れて世界征服にやってきた

















「本当にこれでよいのか?」
 キムラスカの王様が私にそう言った。
 その顔の不信感丸出しな感じったら、ほんと…、うっとうしいというか。
「はい。ルーク様が玉座にお座りになられれば、それだけで終わります」
「しかし、よ。誠なのか?」
 一応私の上司のモースが言ってきた。もう何回目?
「間違いございません。譜石に間違いなどあっては、これまで詠まれてきた預言はいったいどうなるのです?」
 クスクスと笑う私に、モースは少し唸り声をあげながら、結局は納得した。

 さあ、もうすぐだよ。

「あー、う〜」
「ルーク様、もうすぐですから少しお待ちくださいませ」
 この赤ん坊も同然の、ルークという赤毛の子供が、鍵なのだ。
「はい、ルーク様。こうやって両手を上にあげてくださいな」
「あう?」
「そうそう、良い子ですね〜v」

 さあ         いらっしゃい。
















 イ ヴァ ン


















 何もなかった空間から、私の言うとおり両手をあげてた小さなルークの両手を絡め取る、大きな両手の主が現れたので、私はこらえきれず笑った。



「こんにちは、初めまして。僕の名前は、イヴァン。よろしくv」
 ついにこの世界に実体化したイヴァンが、玉座に座らせてたルークを抱き上げて、嬉しそうに笑ってた。
 横で信じられないという顔をしている王様とか、樽みたいな体系のおっさんなんてどうでもいいの。
 イヴァンが、この国を…、キムラスカ・ランヴァルディアを気に入ってくれればいいなあ。
「ほ、本当に来た!」
よ! あの男がそうなのか!?」
「はい。彼こそ、この国に繁栄を約束してくれる者。ただし、先ほども申し上げましたが、それを実現するには、次期国王たるルーク様が必要不可欠なのです。彼が王にならなければ、イヴァンは約束を果たすどころか、この世界に存在することすらできないのですから」
 イヴァンは、この世界とは別の世界にある“国”の化身なのだから、その国のないこのオールドランにいられるわけがないのだ。
 預言とかなんて本当は、嘘。
 別の次元にある国の属国にするための適当な嘘なんだから。
 都合のいいことに、預言のもとになってるらしい第七音素の意志だって自称してるローレライっていうのが、第七音素を一部使ってイヴァンをこっちに召喚するための口実になる譜石を作ってくれた。
 あとこの世界の物質だって言う音素なんだけど、ルークにはローレライと同じ超振動って力があって、なんだかよく分かんないけど、なんでも壊せて、直すこともできるってすごい力なんだってさ。
 ルークは、その力のことを知らないから、イヴァンのために利用させてもらうことにしたの。もちろん本人無意識だから。こっちが力の制御部分を握ってるんだもん、何の問題なしだよ。
 おかげで、ほら、この通り。イヴァンは、この国に来れた。
 わー、なんて嬉しそうな顔してんだろ。あーあ、ルークをそんな高い高いして、よっぽど気に入ったんだね、その子のこと。
 ルークもキャッキャして、その無邪気な笑顔が怖いで定評があるイヴァンにあんなことされて喜んでるって、将来大物になりそう?
 この後、ルークを抱っこしたまま、イヴァンはキムラスカの首都であるバチカルを見学して回った。もちろん私も一緒。
「それにしても暖かい所だね、ここ」
「暖かい所がよかったんでしょ?」
「うん。そうだね。うれしいなーっ」
 ご機嫌なイヴァンの様子に、私も笑みがこぼれた。
「この国、気に入った?」
「うんっ」
 イヴァンは、いつも通りの素朴で無邪気な笑顔で頷いた。
「違う世界を征服するなんて全然考えなかったな〜。これからここも僕の家のひとつになるんだね」
「ん〜?」
「ルークv 未来は君の手にかかってるんだから、立派な上司になってねv」
 ルークってば、イヴァンにまた高い高いされてポカンッとしてる。
 そりゃそうだよ。だってルーク、まだ赤ちゃんなんだもん。
 なんでって? そりゃローレライから聞いたもん。この子がレプリカってもので、生まれたては赤ん坊といっしょなんだって。
「んーv ルークは、暖かくて柔らかいねv」
 イヴァンがグリグリとルークのほっぺに頬ずりしても、ルークはキャッキャっしてるだけで。
 おいおい…、ぬいぐるみか何かと勘違いしてないか、このコルコル野郎。
「でさ…、もう一回確認するけど。僕ってルークがいなかったら存在できないんだよね?」
「そうよ」
「それでルークがどこにいても、テレポートしてルークの所に行けるんだよね?」
「ルークは、イヴァンの未来の上司でもあり、イヴァンをこの世界に繋ぎとめる大事な要なの。ルークの超振動の力でイヴァンは、実体化できてるんだから、ルークのいる所にならどこにでも飛んでいけるよ。だってもしルークの身に何かあったら大変でしょ?」
「なにかあったら僕がルークの体を借りて悪い奴らをこらしめるんだね?」
「そういうこと。ただしルークに乗り移れるのは、ルークの意識がないときだけだから。それ以外はテレポートしてご自慢の『魔法のステッキ』で撲殺するなりしたら?」
「うん、分かった。、本当にありがとう。僕の夢を叶えてくれて」
 イヴァンの夢は、向日葵に囲まれた温かいところでの生活だ。
 キムラスカは、温帯気候だから(砂漠も近いし)向日葵もよく育つんじゃないかな?

 こんなに嬉しそうなイヴァン。久しぶりにみたな〜。
 時空を超える術見つけてよかった。

 えっ? 勝手に余所の世界を征服していいのかって?
 やっちゃだめって誰が言ったの? 連れてきてよ。

 私はね、イヴァンが幸せになってくれるなら他はどうでもいいの。

「ねー、ルークv イヴァンが幸せならいいよね〜?」
「あう?」






 そうそう、自己紹介が忘れてた。
 私は、
 イヴァンの国に古くから住んでいる雪の精霊みたいなもの。
 みたいなものって? 私にだってよく分かんないんだもん。私達のことを精霊とか妖精とか妖怪とかって呼ぶ人達もいたっけ?
 とりあえずイヴァン達みたいな国の化身とは違うけど、似たようなものなのかな?
 一応家族はいるよ? お爺ちゃん、お婆ちゃん、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、弟、妹、その他もろもろ…。
 でも私は、みんなとちょっと違うみたい。だってイヴァンが生まれた時に初めて顔を合わせて以来らしいけど、イヴァンと同じくらいのスピードで成長して、同じくらいの年のまんまなんだもん。
 イヴァンと私は、兄弟みたいに血のつながりみたいなものがあるみたい。イヴァンが死ぬ時(国が滅ぶ時)は、きっと私も…。
 別に不自由してないし。イヴァンと一緒で楽しいよ?
 それで話は変わるけど、なんで私がオールドラントをイヴァンに征服させようと思ったことなんけど。
 イヴァンがいっつも、暖かい所で暮らしたいんだ、って言って南下政策を色々やってて、でも結局うまくいかないからもどかしくなって、だったら余所の世界でもいいんじゃないって思ったから、私はその方法を見つけて、実行したの。
 そしたら大成功。
 一番の協力者、ローレライ。ありがとう☆


 こうして私と、イヴァンの世界征服計画が幕を開けましたとさv













あとがき

 なんだろ?
 この女の子主人公は、イヴァンが幸せなら他どうでもいいキャラなんで、普段から辛口。
 ルークをイヴァンのために利用してますが、彼女なりにルークを可愛がってはいます。イヴァンの未来の上司ってことで。







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